一番大切な人に捧げる二番目の

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大学時代からの友人と飲んでいる時にそう惚気ると、秋本が「そういうところもかわいいよ、ってか」と呆れて首を振った。 「なんだよそれ、お前の落ち着きないところは断じてかわいくはないよ。むしろうざいよ。」 「まぁまぁ」と美雪が宥める。 「年上の男性から見たら、親心をくすぐられるのかもよ」 「親心って、武井さんと私は三つしか歳は離れていないよ」と夏海は反論する。 「彼が大人っぽいんだと思うな。ああ、包み込まれてるなぁって思うんだよね、やっぱり包容力って大事でしょ」 「なぁに言ってんだよ。お前大学の頃付き合ってたの包容力ないやつばっかだったじゃん」 と秋本に指摘されてぐっと詰まる。 「お前、ほんとにその人のこと好きな訳?なぁんか、手頃なところで手を打とうっていう打算が透けて見える気がするけどな。その人のこと話してる時のお前からはなんかこう、愛が感じられないんだよ」 ずけずけと言い募るこいつを早めに抹殺しておくんだった、と夏海は箸を握る手に力を籠める。大学時代の恋愛遍歴を全て把握されているのも地味に痛い。とは言っても、別に夏海は大学時代特段ダメな男たちと付き合っていたわけではなかった。ただ、いつも友達の延長線上としての付き合いで、到底大恋愛とは言えないものだったのは認めざるを得ない。
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