一番大切な人に捧げる二番目の

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そんなことがあったからか、最近の夏海の頭の中には常に結婚の二文字がちらついている。武井さんも、「子供が好きだから、沢山ほしいなぁ」なんて照れ臭そうに言っていたから、もしかしたらもうそろそろ、プロポーズなんてこともあるかもしれない。そして一月は夏海の誕生日だ。もしかしたら、もしかしたら。そこまで考えて夏海は思ったのだ。 荷物の整理をしておかなくっちゃ。 学生時代のふざけた写真とか、もしかしたらまだ何枚か残っている恋人との写真とか、プリクラとか、時間があるうちに断捨離しておこう。段ボール箱を取り出して中からゴソゴソとアルバムや封筒などを取り出した時に、夏海の「大切な物入れ」の蓋が外れて、中からコロコロ…と転がり出てきたのがそれだった。 直径1.5センチほどの金属製の物体。丸くて、手の平に乗せるとひんやりとした心地よい感触が伝わってくる。 「ボタン?」 銀色に光るそれは、何かの衣服についていたボタンのようだった。造りから見て男物だ。なんだっけこれ?しばらく考えてみるが思い出せない。捨てちゃおうかな?でもなんだかひっかかる。夏海は仕方なく、それを財布に入れた。次に美雪と秋本に会った時に、聞いてみようと思ったのだ。 「…という訳なんだけどね」と夏海はごそごそとそのボタンを取り出して、手の平にコロンと載せて見せた。 「二人とも、このボタン何か知ってる?」 二人が夏海の手の平を覗き込む。
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