一番大切な人に捧げる二番目の

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☞ 結局それから一週間後、夏海は相変わらずクロゼットの大掃除にいそしんでいた。 すぐに終わるかと思いきや、仕事が忙しくなって手を付けられない日が続いたり、ついつい手を止めて思い出の品に見入ったり、捨てるものの取捨選択をしたりしていたら、大掃除はもう既に二週間越しの大イベントになっていた。 「さてさて」と夏海は独り言ちる。 「一番の大物が残ってたね」 手にしたのは写真入れだ。大学入学以前のものは実家に置いてあるから、中に入っているのは大学入学以降の写真ばかり。大体はデータになってパソコンに入っているけれど、プリントしたものを貰ったり、大事なものはアルバムにまとめたり封筒に入れたりして保存している。自分の昔の写真を見るのはなんとも面映ゆい。撮っているときは良い記念になった、と思うのだけれど、時間が経ってみれば思い切りはじけている当時の自分の姿に、もっと落ち着きなさいよ、とつっこみたくなる。それでも夏海は丁寧にページをめくった。 広く浅く交友関係を広げるタイプではなかった夏海のアルバムに出てくるメンツは大学の四年間を通して大体似たり寄ったりで、全く美雪の言う通り、狭い世界で生きてたんだな、と夏海は思う。それでも、写真に写る自分はいつも笑顔でよい人間関係に恵まれていたんだと改めて神様に感謝する。付き合っていた恋人に関しても、二人でべったりというよりは仲間内でわいわい、という雰囲気だ。 それにしても。夏海はページを行ったり来たりしながら顔を顰める。 なんだかおかしくない? もし誰かにこのアルバムを見せたら、きっとその人たちは口をそろえて言うだろう。 「この人とずっと付き合ってたの?」と。
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