第一話「博物館」

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私はいつもこの博物館に来る。入場料無料だし、なんと言っても 「今日も会ったね」 最近のお気に入りの展示物のミイラ君。期間限定で飾られているらしいけど私以外だーれも見向きもしない。 首には何か書かれている札、手には重々しい手枷。 ガラスケース越しに私はミイラ君に恋してる。 一体生きていた頃はどんな人だったの? どんな生活をしていたの? 聞いてみたい。 って、無理なのは分かるけど。 「間もなく閉館のお時間でーす。館内に残っているお客様いらっしゃいましたらお帰り下さーい」 あぁ、もう閉館かぁ。 「またね、ミイラ君」 私がミイラ君に背を向け帰ろうとした瞬間  ゴゴゴゴ… 「えっ…きゃぁ!!」 地震?!しかも大きい!! ガシャンガシャンと周りの展示物が崩れていく。 (逃げなきゃ!でもミイラ君……ぇ?) なんとガラスケースの中でミイラ君が倒れている!って、手枷が壊れる! 「お客様!お逃げください!」 係員が私を引っ張った瞬間、パリーンとガラスケースが割れる。 「きゃああああ!!」 ヤバイ…私、死ぬのかな… 目の前にスローモーションでミイラ君が倒れて来るのが見える。 「……ネルガル?」
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