森田ユウタがやってくる

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後から聞いた話では、きよみは命こそ助かったものの、 体の数か所を骨折し、また学校に来れるまで時間がかかるらしい。 放課後、一緒に帰るしおりとりかの顔は暗い。 「・・・きよみちゃん、森田ユウタのこと言っていた」 「うん、何故森田ユウタなんだろう」 「きよみちゃんは何かを見たようだった。それで走って 逃げて階段から落ちたんだ」 「それがもしかして森田ユウタ?」 「・・・かもしれない」 「でも森田ユウタって私たちが作った架空の存在じゃない。 それがどうしてきよみちゃんの前に」 「・・・わからない」 二人は黙って歩いていた。 ある交差点までついたとき、しおりが言った。 「じゃあ、私こっちの道で帰るから。またね、りかちゃん」 「うん、またね」 二人は手を振って別れた。 しおりが住宅地を歩いていると、後ろから物音が聞こえた。 ギイギイ・・・ギイ・・グググ・・・ズズ・グ・・ しおりは後ろを振り向く。 そこには誰もいない。 しおりはまた前をむいて歩き出す。 ギギイ・・ガガガ・・・ググウ・・・ガガア・・ さっきよりも大きく音が聞こえる。 しおりはまた後ろを振り向く。 そこには誰もいない。 しおりは頭を前に戻す。 すると耳元で 「次はお前だ」 しおりは全速力で走った。
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