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第七話 ゴブリン邸とお祝い 後編
咲夜は、ギルドに入るなりカウンター向かって走って行った。
「冒険者登録お願いしまーす!」
「はい。では当ギルドの説明をしますね。」
「お願いします!」
当ギルドはランク制で強さを図っています。ランクはFから始まりSまであります。依頼を受け、達成すると報酬が貰えます。ある程度依頼を達成すると、昇格が出来ます。ただし、ランクCからは昇級試験があります。依頼を受けられるのは1つ上のランクまでです。始めは、薬草の採取など簡単な依頼を受けるのをおすすめします。説明はこれで以上です。
「ではギルドカードを作るのでこの水晶に触れてください。」
「はーい!」
咲夜は返事をし、水晶に触れた。もちろん、こちらも神官のおかげで何事も無くギルドカードを作れた。
「おぉ!」
数秒後、咲夜は依頼掲示板から薬草採取の依頼を取ってきた。
「これ、お願いします」
「はい。お気を付けて」
あれ?.......僕は.......何をすれば?
咲夜は、完全に影兎の事を忘れ1人で冒険者登録をし、依頼の発注までもしていた。
「あ、えーと.......さく、や?」
すると、咲夜は思い出したかのようにハットした顔をしていた。
「ごめん、ごめーん、えっちゃんのこと完全に忘れてたわ」
咲夜は、影兎のことを完全に忘れていたの事に対し、謝りながら、笑っている。
.......ひどい!
それから、咲夜のおかげで無事、影兎もギルドカードを作ることが出来た。これでやっと2人揃って依頼を受けることが出来る。
「さ!気を取り直して、薬草採取に行くよー!」
「お、おー」
影兎は余り乗り気では無い様子で返事をした。
今回取りに行く薬草の名前は「キィヒランデ」という、回復ポーションを作るのに必至なアイテムだ。花は綺麗な白色で、身は実らないらしい。あくまでギルド職員から聞いた情報なので、実物が想像できない。
「さて、ここら一帯の草を鑑定しまくるよ!えっちゃん」
着くや否や、見渡す限りの大草原に向かってそう言った。
「え.......これ、全部?.......」
「ん?そうだけど?」
咲夜は不思議そうに影兎のことを見ている。
それから30分後、2人共の鑑定スキルがCからBに上がった。
「鑑定、鑑定、鑑定!.......」
影兎は必死でひたすら、そこら辺の草を手当たり次第に鑑定している。
ヴィーピリオ
詳細 食べると毒状態に陥る。毒の継続ダメージが入る。
主に攻撃用ポーションで使われる。
レヴェン
詳細 食べると麻痺状態に陥る。一定時間体が麻痺する。
主に医療関係で使用される。
雑草
詳細 特に効果は無い。ただ少し苦い。
主に草食動物の餌に使われる。
回復ポーション用の「キィヒランデ」なんか.......どこにあるんだよ!!
影兎の心が壊れかけている・・・声には出さず、内心でめちゃくちゃ叫んでいる。今にも泣きそうになりながら。
「あ、あったー!」
離れた場所で鑑定していた咲夜から、かすかに声が聞こえた。
「なにー?」
影兎は聞き取ることが出来なかったので、何があったかちょい叫んで聞いてみた。
「あったよ。あった『キィヒランデ』!」
咲夜は影兎の胸の方に「キィヒランデ」を突き出した。それは、話に聞いていたとおりの薬草だった。綺麗な白色の花びらが複数あり真ん中は黄色をしていた。
「すごいね.......咲夜は」
影兎は、驚きのあまり固まってしまった。すると
「あ!えっちゃん足下!」
突然咲夜が、影兎の足下を指差した。影兎は、咲夜の手をなぞるかのようにして、足下をみた。
「あ、『キィヒランデ』だ」
そこには、今にも踏み潰されそうな『キィヒランデ』の姿があった。これがまさしく「灯台もと暗し」だね。
「やったあ、あ!」
喜んでいるのも束の間、頭の中でレベルアップ音がなった。
「ピロン、ピロン」
鑑定B→鑑定Aになりました。続いて隠密E→隠密Dになりました。
「やったあ.......」
影兎は1度に2つもスキルレベルが上がり、腰の方でガッツポーズをして喜んでいる。
「え、いいな!」
その光景に咲夜は、目をうるうるさせながら羨ましそうに視ていた。
その後、咲夜も無事鑑定Bが鑑定Aになり、身体能力上昇Dが身体能力上昇Cにあがった。実質2時間以上咲夜達は、『キィヒランデ』を探すのに夢中になっていた。この依頼は、『キィヒランデ』1本で銅貨2枚、採取した本数により貰えるお金の額が変わるのだ。ちなみに最低で10本採取すれば依頼完了だ。
「どれくらい集まった~?」
一通り取り尽くしたであろう咲夜、が影兎に近づいていきながら本数を聞いた。
「僕は20本だね」
これは、かなりの大収穫だ。普通ならば、こんなにも大漁に採取されることは滅多にない。
「おおー!私は25本!」
また、咲夜も負けじと沢山キィヒランデを見つけていた。
それからギルドへ向かって帰りだした。ギルドに着くなり薬草の換金をし始めた。
「薬草採取の依頼、かんりょーしましたー」
咲夜はギルドカウンターに、影兎は咲夜の陰にいる。
「この量は.......いったい.......」
職員さんは、薬草の多さに戸惑いながらも訳を聞いた。
「まあ、いろいろあってね」
咲夜は、職員さんの気も知らないで嬉しそうに答えた。
「合計で.......45本?!ですね.......少々お待ちください」
職員さんは慌てた様子で、席を外して行った。
どうしたんだろう?かなりの時間かけて採ったんだけど.......
影兎は内心、不安しかない。これからどうなるかも知らずに
少し待っていると、さっきの職員さんが戻ってきた。後ろにもう1人、ガタイの良いおっさんがいた。顔は少し厳つくて、髪は金髪のトゲトゲだ。瞳は黄色で、口ひげを生やしていた。身長は、扉を屈まないと通れないほど高かった。
お、おぉ.......厳つ!そして高っ!
影兎は思わず声に出しそうになったが、心の内にとどめることが出来た。
「お前さんらか?『キィヒランデ』を大量に持ち込んだっていうのは」
え?え?どういうこと?
「はい!」
影兎が戸惑っているうちに咲夜が勢いよく返事した。それを聞いて
「ふーむ、奥に来てくれねぇか」
なぜか奥の部屋に2人は案内された。
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はこのギルドを管理している!ギルド長のゴルドウス・ウォーディだ。お前さん達は?」
かなりの声量だ。出された飲み物が振動で揺れているのが分かる。
「私は、咲夜・人影で」
「あ、影兎・如月です」
お!えっちゃん、ちゃんと反対にして言ったね!そうそう、異世界だからこうしないとね
「サクヤとエイトだな、早速本題に入ろうと思う――」
ギルド町の話が長ったらしかったので、簡単に訳すと
どうやらここ最近、薬草の納品数が減っているらしく出店にも余り出回っていないとかで、苦労していたそうだ。依頼の張り紙を出しても、受けてくれる人はいるも規定の数見つからないらしく、無限ループになっていた。そんな中咲夜達が依頼の規定よりも遥に多い、45本という数採取していた。のでどうして、どこでそんなにも採れたのかを聞きたかったそうだ。
「あーなるほど、私らが取りに行ったのは――」
◆ ◆ ◆
とまあ、いろいろあってランクがFからDになりました。本当はランクCにしても良かったらしいが、ランクCからは昇格試験があるためランクDまでの飛び級となった。だが運の良いことに、昇格試験を受けさせてくれるらしいので、2人とも受けることになった。
「ひろーい!」
ここは冒険者ギルドの裏側、魔法の練習や模擬戦が出来るように広く造られている。大きさは半径25メートルの円形状の中に砂場のような、小さい運動場のような感じだ。周りには会場を上から見下ろせる、応援席みたいなのがあった。
「ここで試験を受けるのか.......」(ぼそっ)
思わず声に出してしまったが、誰にも気付かれていないようだった。
そしていよいよ、咲夜と影兎の昇格試験が始まる.......
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