第九話 帰還とトラブル 前編

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第九話 帰還とトラブル 前編

俺達は無事依頼をこなし、村で祝杯をあげた後、依頼達成報告のため冒険者ギルドへ帰ってきた。 「ふぅー、疲れたな仕佐」 条夜は扉を開けると同時に仕佐の肩に手を掛けた。 「誰のせいだよ!誰の!」 仕佐は苦笑いしつつ、突っ込んだ。中へ入るといつもより活気だっているように感じた。するとギルド受付員の人が仕佐達に気付いたみたいで、声を上げて近寄ってきた。 「心配しました!捜索隊を送ったのですが……大丈夫だったみたいですね」 ほっと、胸をなで下ろした。 「迷惑を掛けてすいません……えっと、」 仕佐はまた、謝った。 「あ、私はセルナ・ミスティーナスと言います」 仕佐はさり気なくギルド受付員の名前を聞いた。 『(流石は仕佐だね。家族が仕佐と父親以外女ってだけはあるね) それ、褒めてるのか? (褒めてる、褒めてるよ笑。ボソッ多分、恐らく、きっとそうだろう……) それで、なんの用かな?「特殊?」のスキルを使ってもないのに、突然出てくるのはなんなんだ? (……えー、良いじゃん創世神神なんだからさぁ) いやいやあんたが神?なわけ笑 (え?……信じてないのか……それはそうと、1つ助言をさせて貰おう) は? (…………君たちが楽でいられるのは、君たちがまだ標的ターゲットになっていないからだ。そのことを肝に銘じておけ)』 ――プツン え?……どういうことだ?それに最後の言葉だけ声質が違った。と言うことはあの自称神以外にも居ると言うことなのか……? すると、長考していたせいか不意に肩を触られてビクッとした。 「……あの、どうかなさいましたか?」 「え、あ、いや、何でもないです」 僕は少し戸惑いながら応えた。 「なあ、ゴブリン討伐の依頼達成の承諾を……」 「はい。カウンターに行きましょうか」 そして、僕たちは無事依頼達成の承諾を貰い、そのままの足で宿屋ライムに向かった。 【宿屋ライム】 仕佐は右手を顎に当て無言のまま自室に向かい、ベットに腰を下ろした。 あの自称神が言っていたのはどういうことだ?全く意味が分からん。「僕達が楽でいられるのはぁ?僕らが標的になっていないから?」どういうことだよー! そんなこんなでずっと悩んでいると、なにかの声が聞こえた。 「――おーい!――仕佐ー!!」 「わっ!?!」 素早く顔を上げると目の前に条夜の顔が映り込んだ。僕はかなり驚いて後ろに流れるようにして倒れた。 「イテテテ、なんだ、条夜か」 「なんだじゃなくて!……何をそんなに考え込んでんだ?」 どうやら僕は条夜が居たことも忘れて1人でずっと考え込んでいたっぽい。 「ん、ああ。実はね……」 そして自称神とのやりとりの全容を教えて、僕がなぜこんなに考えていたかを話した。 「――なるほど~。確かにそらあ考えるな」 仕佐は静かに頷くと、一度立ち背伸びをしてからもう一度座った。 「……とりあえずは、記憶の隅にでも置いておくか」 条夜がそう提案すると仕佐は「そうだな」と頷き、後ろに倒れて、目を瞑った。――どうやら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。窓の外はすっかり暗くなっていた。不意に視界の端にずっと置きっぱだった学校のカバンが眼に入った。仕佐は今頃思い出したかのように学校のカバンを手元に持ってきて、中身を漁った。 「……確か、この辺に……」 僕は独り言を言いながらある物を探した。カバンの中には、教科書類、筆箱、水筒、そして…… 「あった……スマホ」 こっちでも使えるのかな?…… そう思いながら電源を入れてみる。時刻と日付が表示された。『3月8日水曜日 午後4時32分』 これ、時計の方は完全にあってないよ、な?今もう、暗さ的に午後7時くらいだもんな……日付は、こっちの世界がどうかは分からないけど、向こうの世界が何時(いつ)なのかは分かるな。電池は、十分あるな。使える機能を探すことは出来そうだ。 そして、1つずつアプリを開けていった。メッセージアプリ、検索アプリ、動画サイト…… ――パタ 仕佐はスマホを閉じ、カバーをした。 やっぱり、と言ったらあれだけど……どのアプリも開かなかったか…… 気づいてはいたが全くその通りだったので仕佐はその場で落胆した。すると何かを思い出したかのように自分のスキルを見出した。そして 「……鑑定と解析スキルを使えば……もしかしたら!」 僕はそんな希望を抱きながらスマホを鑑定、解析した。すると結果はどうだろうか、 『スマホ 正式名称スマートフォン 小型通信機器  様々な技術の結晶体 魔法に置き換え可能――』 その後も沢山の文字列が並んでいた。 「凄いな……」 僕はスマホの詳細画面をスクロールしながら驚きの声を上げた。 ……て、ん?!『魔法に置き換え可能』だって?! 僕は驚愕の余り身体を硬直させ、手が震えだした。 と、ということは……この世界でもスマホを使うことが出来るのか!? 僕は魔法の可能性に期待しつつ、困惑した。 僕は早速試してみるべく詳細を見始め――ようと思ったが急に眠気に襲われたため、一度中断してまた明日試してみることに決めた。僕はスクロールを閉じるとそのまま布団に仰向けで寝転んだ――スマホは念のためカバンの中にしまった。一度条夜の方を見て寝ているのを確認すると、僕も布団を掛けて寝た――かったが、明日のことを考えるとつい眠気が飛んでいってしまった。僕は仕方なく布団から出てどうしようか悩んだ。その結果夜の街を徘徊する事に決めた。  夜の街は意外にも物静かで、空気がとても澄んでいるように感じた。僕は一度この空気を大きく吸って、吐いた。その後適当に歩き始めた。 「――それにしても僕たちがこの世界に召喚されてからもう6日も経つのかぁー、明日で1週間。家族や友達は皆どうしてるんだろう……僕を、探してくれてるのかな……」 僕は地球にいる皆のことを思い出してしまい、思わず涙が溢れそうになった。周りが静か故か、1人が無性に寂しくなってしまった。 「……帰ろうかな」 この世界に来てから1人になったのはこれで2回目だが、あの時は自称神が居てくれたので寂しいとは思わなかった。 その前にも宿屋を探しに1人になったこともあったな。 「自称神か……」 僕はぼそりと呟く。誰かに言うのでは無く、ただ自分に問いかけるように。 『特殊?』を使えば自称神と話すことが出来る。でも…… 「よし! 宿屋に帰るまでの間だけ、自称神(あいつ)と話そう、かな……」 やはり戸惑いの方が勝ってしまう。でも意を決して『特殊?』を発動させようとしたときだった。突然頭にあの音が鳴り響いた。 『(なんで仕佐の時間つぶしに付き合わないといけないのさー?) 仕佐は不意を突かれキョトンとした。 ……今さ、僕が掛けようとしたんだけど? (うんうん、それでそれで?) 自称神は何事も無かったかのように見事にスルーした。 まあいいや、昼言ってたこと。あれはどういう意味? (……) 自称神はなぜか黙ったまま少し考えるようにして、次の言葉を発した。 (勇者召喚には回数制限がある。……それともう1つ――)』 「……ハア、ハア。確か、この辺りだって……」 僕は自称神に言われ、西の住宅街街道へ急いで向っていた。その道中フードを深く被っている怪しい5人組を見かけたが、目的地の方を優先して急いだ。 途中、高等魔法学院やテイマーギルドを見かけたが、これも止まらず通り過ぎていった。          ◆ ◆ ◆ 「あ、な……たは? いった、い……」
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