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第十話 帝国と王都
「確か、この辺りのはず……」
仕佐は自称神に言われた西の住宅街の街道に着いた。まだ夜中なので辺りは真っ暗だ。街灯のおかげでかろうじて足下くらいは見えている。仕佐は息を潜め、恐る恐る辺りを探索しだした。
なにも、いないよね……
仕佐がちょうど路地裏の前を通りがかったとき、路地裏から小さな物音が聞こえた。仕佐は壁に身を当てて路地裏を覗いた。
「はぁ、ったく。なんで俺がこんなことを……」
誰かが何かをしている。声質的には男だがその場から動かずに何かをしている。仕佐からの位置ではちょうど男の背が見えるだけで何をしているかは分かりそうになかった。
「こいつらか。でどこに連れてくんだっけ?」
男は一人でブツブツ言いながら、暗闇の中に居る影に近寄っていた。
「……あぁ、どっかのギルドか。ここから近いのだと……黄泉怪傑の炎帝。あそことはあまり関わりたくねぇんだよな~」
仕佐には何を言っているのかが全くと言って良いほど理解できなかった。
「ま、そんなこたぁ後回しで良いとして……」
男の目が一瞬こちらを見たような気がした。この暗さで人が居ることを確認できるはずがない、と仕佐は思っていた。だがここは地球とは違い、魔法やスキルがある異世界だと言うことを仕佐はすっかりと忘れていたのだ。そのためが故に、自身から発生する『音』を消せるスキル『隠密』生物のステータスを確認することが出来るスキル『鑑定』生物以外の無機物、物などの状態、詳細を視認することが出来るスキル『解析』。これらのスキルを所持していることすら、目前の状況によって思考を上書きされていた。
「おいおまえ、出て来いよ。隠れてねぇでさ!」
突然男がそう叫んだ。仕佐はビクンとし、建物の影に背を預けるようにして隠れた。
「そこに居るのは分かってんだよ!」
男の足音がだんだん大きくなっていく。仕佐の心臓の鼓動も足音に連れだんだん早くなっていく。
く、来る?! や、やばい、どうしよう!
仕佐はパニック状態に陥っていた。仕佐がここまで来たのは、あの自称神に言われたからであって、こんな事態になるとは微塵も思っていなかったのだ。
そんなこんなしている間にも男の足音は大きくなっていく。男の足音が途絶えた途端、すぐ側に来たのだと思い仕佐は咄嗟に目を閉じた。
「おい、おまえ。こんなとこでなにしてんだ?」
「……」
おかしい。俺に話しかけてきてるんならさっきまでの怒声でいいはず……
仕佐は目を瞑ったまま思案した。男から聞こえてきた声は先程までの怒声とは違い、嫌々、怪訝そうなこえだった。仕佐は意を決して恐る恐るゆっくりと目を開けた。
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