第十話 帝国と王都

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仕佐は――寝た。 【翌日】 仕佐は条夜に肩を揺すられて起こされた。 「朝飯食いに行こうぜ!」 朝っぱらから元気な奴だ。こちとら昨日の件のせいで寝不足だというのに…… 眠すぎてまともな思考が出来ず、顔を洗ってくることにした。 「先に行ってて……顔洗ってくるから……」 と、仕佐はすでに条夜に背を向けていたが言い終わる前に呼び止められた。仕佐は振り返り()()を待った。 「……おりゃっ」 バシャン 仕佐の顔に冷凍庫並みの氷水がぶちまけられた。 「……冷たっ?! てかまたかよ!」 何かを言うのであろうと言葉を待っていたのに帰ってきたのは水(物理)だった。仕佐が文句を言おうと口を開きかけたが、条夜の方が少し早く仕佐は何も言えなかった。 「わざわざ洗面所行くより楽だろ?」 「いや、確かにそうだけどさ……」 仕佐は落胆を隠さず、食堂へと向かう条夜の後をタオルで顔を拭きながら着いていった。 ――仕佐達は日替わりの定食を食べている。 「――そういえばおめぇよ。昨日の騒ぎ知ってっか?」 「何の騒ぎだよ?」 隣の席で朝食を食べている中年冒険者が何やら面白そうなことを話しており、条夜は目を輝かせながらその話に聞き入っているようだ。 「昨日の真夜中にな、一軒家が燃えたらしいんだよ」 「はぁ? なんでいきなり?」 「さあ? オレがその場に居たわけじゃぁねぇからよく分からんがな」 (……なんか既視感が……うん。気のせいだな、きっと) 仕佐は思い当たる節があったのか、うんうんと唸ったっていたがすぐに合点があったのか食べることに集中しだした。 「じゃあなんだ、放火犯でもいるのか?」 「知り合いから訊いたんだがな、燃えた家から去る二人組を見たとか言ってんだよな」 「なんだそれ、曖昧すぎたろ」 朝っぱらから酒を飲んでいた二人の中年冒険者は、席から立ち上がり、話が一区切りしたのか代金を払って外へ出て行った。 (うわぁ……、あれに関わりたくないな……というか条夜が目を輝かせながら僕のこと見てるし……はぁ) 「どうしたの条夜? ……って放火の事だよねきっと」 「おお、よく分かったな! なあ、いっ……」 「どうせそこに行きたいんでしょ……はぁ」 仕佐は条夜の言葉を遮って呆れ口調で言った。仕佐は水を口に含みながら横目で条夜の話を聞いた。 「なあ、いいだろ?せっかく面白そうなことがあるんだからさ、ね? それにさ、やっぱり異世界召喚モノで事件に巻き込まれるのって王道だろ?」 仕佐は飲んでいた水の入ったコップを机に置きながら言った。 「いや、巻き()()()()じゃなくて巻き()()()()()()の間違いでしょ」 「あ、バレた?」 (条夜、完全に楽しんでるな) ――結局最終的には仕佐が押し負け、行くことになってしまった。
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