第十話 帝国と王都

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         ◆ ◆ ◆  とある屋敷の一角、その領地を治めている領主の娘(お嬢様)が居座っている部屋がある。  部屋にはお嬢様とお嬢様の専属メイドが何やら退屈そうにしながら会話している。 「――はぁ~あ……暇ですわね。キャルもそう思うでしょう?」  お嬢様はベットでうつ伏せになりながら無気力な声でそう言った。 「そうですねぇ、わたしも暇ですぅ」  キャルは扉の前に立っている。ただし壁に背中を預けず、きちんと自分の足で立っている。  語尾が柔らかいにも関わらず、いまにも寝てしまいそうな声で返事をした。 「あ、そうえいば~、明後日の八日に()()()()様がいらっしゃるそうですよぉ」  相変わらずキャルは眠そうにしながら今思いだしたことを言った。 「……その名前を使っていらっしゃるのですか?」 「はい~、そう聞いていますぅ」  今度はあくびをしながら受け答えをした。  本来、主人にこのような態度をとっていたら罰せられそうなものだが、お嬢様とキャルは王立初等学院時代からの親友であり、幼馴染みなのだ。普段、人の目がある時以外はタメ口で話している。 「……そろそろ行きましょうか」  お嬢様がそう言うと、ベットから立ち上がりキャルが立っている出入り口の扉まで歩いた。  お嬢様が近づいてくるのをあくびをしながら確認すると、部屋の明かりを消し扉を開けた。 「ありがとう。キャル」 「いえいえ~、従者としての役目ですから~」  お嬢様が部屋から出るのを見届けると、キャルも部屋から出て鍵を掛けた。  お嬢様とキャルは静かに廊下を歩き始めた。  しばらく歩くと、一際厳重な扉の前で二人は足を止めた。扉の前には警備員のような人が二人、扉を挟むようにして立っていた。 「ご苦労様です。少し閲覧してもよろしいでしょうか?」  お嬢様が労いの言葉と共にそう告げると 「はっ! すぐ開けます」  警備員二人が声を揃えて返事をし、左右から扉を引っ張り開閉させた。  これが重い扉ならばギギギと音を立てながら開くのだろうが、あいにくとそれほどの厳重さはなく、スススとカーペットとのこすれる音と共に開かれた。 「わたしらどもは扉の前に居ますので何かあればお申し付け下さい」  一人が頭を下げながらそう言った。  お嬢様は丁寧に笑顔で返すと、部屋の中に足を踏み入れた。それに続けて、キャルも後を追うようにしてお嬢様に着いて歩いた。  この部屋は十五畳ほどの広さがあり、少し広めな書斎となっている。  魔法に関する本や、薬学に関する本、この国の歴史など様々な方面に関する本が並べられている。
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