第十一話 魔獣と兵士

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「――咲夜さん。影兎さん……起きてください」  いつの間にか咲夜も眠っていたようだ。まだ馬車は揺れているが、トリスさんが二人を起こしてくれた。 「……ん、んぅ」 「あと三十分ほどで着くので、そろそろ起きてください」  影兎が先に目を覚ました。 (柔らかい……なんだこれ?)  地面の上で寝ていたはずなのに、いつの間にか寝心地が良くなっており少し混乱しているようだ。 「……あれ?」  目を覚まし、目線の位置が少し高い事に気がついた。目を横に――地面の方へ向けると…… 「……って。ええ?!」  影兎は飛び跳ねるように身体を起こした。そのままの勢いで後ろを振り返ると、咲夜が壁にもたれかかって顔を俯け眠っていた。 「……」  無意識のうちに影兎は呆然としたまま咲夜の顔を覗き込んでいた。  ――咲夜と目が合った。 「……あれ? えっちゃんもう起きたの?」 「え、あ。うん」  咲夜は目をぱちくりとさせながら、両手を上げて伸びをした。  ……今更になるが影兎と咲夜はこっちの世界に来てから一度も着替えていない。むしろ二日前ほどに魔族と出くわしたときも、コーリスさんとの昇級試験があったときも今着ている服と同じなのだ。  ちなみに、影兎と咲夜は中学生だ。咲夜はセーラー服の上からジャージを着ているだけのラフな格好(もちろん下はスカート)に対し、影兎は制服ではなく体操服を着て、上からジャージを着るという今から体育でもするのかという格好だ。  学校カバンは常に二人とも持ち歩いている。ただ単に置いておく場所がないだけだが…… 「えっと……なんで膝……枕?」  訊かずにはいられなかった。 「……苦しそうにしてたから?」  求めていた答えと違い一瞬「(はてな)」を浮かべるが、そういえば途中まで悪夢を見ていたような……と思い納得? した。 「……さて、今回討伐する魔物ですが」  いつまでも本題に入りそうになかったからか、トリスさんが手を叩き話題をすり替えた。  影兎と咲夜はトリスさんの方に向き直り胡座をかいた。 「影兎さんには言いましたが咲夜さんには言ってなかったですよね。デス・サーペントは通称ゾンビ蛇とも言われて――」  影兎は一度、船でデス・サーペントについてトリスさんから教えて貰っていたのでなんとなく聞き流した。 「――次に危険な魔物ですが……外を見てくれますか?」  そう言われ咲夜と影兎は馬車の外を見た。  先程まで岩ばかりのゴツゴツした道だったのにいつの間にか舗装されたきれいな道になっていた岩はほとんどなく変わりに、横に広がっている木がかなり見えた。 「……変な木」 「あれはここでしか育たない木なんですよ。あ、丁度居ますね。木の上を見てください」  言われるがまま咲夜と影兎は木の上に視線を向けた。  黒い大きな影がいくつか視認できた。目をこらしてよく見ると四足歩行の魔物のようにも捉えることができた。 「でかっ?!」
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