第十一話 魔獣と兵士

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「すごっ……」 「威力が……っくう」  咲夜は『水刃氷雪』の効果に驚き、影兎は威力に驚いた。  今の魔法で残っていた魔力のほとんどが持って行かれた影兎は魔力の急激な減少により激しい頭痛を引き起こしていた。 「大丈夫?! えっちゃん?」  足場の『竜巻』を上手く操作し影兎に駆け寄った。  さらに不運なことに大量の敵を倒したことにより経験値が、それも影兎のスキル『獲得経験値Up』の効果で通常の1.5倍以上の量の経験値が影兎に次々に加算された。  Lv3→Lv8、Hp276→410、魔力145→200、素速さ63→72、筋力53→57になりました。  並びに風耐性D→風耐性B、水耐性D→水耐性B、射撃C→射撃Aになりました。  ――風属性が“極属性”嵐になりました。固有魔法『疾風風紀』を手に入れました。  ――風、水が極属性になったため一つに統合されます……。“氷刃”になりました。  ――称号【氷河】【凍結】を手に入れました。 「っくぅ……」  一通り鳴り終わると頭にボールでもぶつけられたかのような衝撃が神速で迸った。あまりの痛さに頭を右手で支えると自然と前傾姿勢になった。  くらっと一瞬意識が遠のいた。思わず体勢を崩し『竜巻』から足が離れてしまった。 「えっちゃん!」  咲夜はすぐさま気付き影兎を追って足場から飛び降りた。下を見るとD.Sがこちらを窺うように――上からは見えないように影兎達を見据えながらブレスを溜めている。 「咲夜さん! 影兎さん! 早くそこから逃げてください!! 広範囲型のブレスが来ます!」  馬車付近にいるトリスさんが大声でそう叫んだ。どうやらD.Sの幼体トリスさん達にも襲いかかって来ていたらしく、剣を構え影兎が取り残した幼体とトリスさんが剣と魔法を駆使し応戦していた。  ――だがもう遅い、影兎は地面から三メートルの高さまで落下しており咲夜は影兎の頭上五センチの位置にいた。D.Sはというと溜めきったブレスを今にも放とうとしていた。  次の瞬間。トリスさんが危惧していたとおり広範囲型の魔法相殺ブレスを影兎目掛けて解き放った。  影兎は未だに意識が遠のいたままだ。咲夜は左手を伸ばし必死で影兎を捉えようとしているがその努力も虚しく空を切るだけだった。 (届かっ……ない!)  咲夜は必死で影兎を掴もうと藻掻くが空中では思うように動けず――一瞬まばたきをした。次の瞬間目を開けると影兎の姿はなく、完全に見開いた両目が捉えたのは炎の渦が視界上部から下部へかけて一直線に通っていた景風景だけだった。 「っ……えっ、ちゃん……」
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