第十二話 龍疾ユングヴィ・ドラゴン

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 疾風風紀の効果はたったの十秒間しか使えない。それに一度使うと再び使用するまで二分のクールタイムが必要になってくる。それでも今使わなければ後で後悔するかも知れない。そう一瞬で考えると、もうなりふり構わず走り出していた。 (もっと……もっと速くッッ!)  ここからトリスさん達までの距離は……およそ五十メートル。充分間に合う距離だ。だが、ドラゴンがいつ攻撃を始めるかは分からない。  咲夜は走りながら思考も加速させた。  スキル――身体能力上昇、風耐性――  毎秒十二メートルに飛躍した。  単純計算でここから約四秒で着くことが出来るようになった。  ――っとその時だ。咲夜の視界上部、ドラゴンの少し上空で何かが煌めいた。決して眩しいことはなく、一瞬だったため何かが反射したのだろうとその時は思っていった。  残り十メートルというところで奇妙な音が聞こえた。それも複数。  キュォォォ……!  魔物の声とも聞き取れなくはないが周囲にはそれらしき姿は見えない。かといって上空には……!? (な……なにあれ)  ドラゴンの遥か上空から無数の何かが降り注いでいた。まるで流星群のような……  咲夜は走りながら目で追い鑑定した。  名称 流星群(メテオーズ)  効果 使用者の魔力量によって放てる弾数が変わる。一発で大概の魔物は木っ端微塵に吹き飛ぶ。 (あれが……魔法? 一つで大概の魔物を木っ端微塵にできる威力のメテオが……一,二,三……十個くらい?)  このままではトリスさん達もあの魔法の餌食になりかねない。かくいう咲夜もだが。  ――ようやくトリスさん達がいる場所まで到着できた。時間にすればすごく短い距離だったはずなのにとてつもなく長い時間走ってきたような感覚に咲夜は陥っていた。  ここからトリスさん達を抱えて……はさすがに無理だ。ならばえっちゃんに手伝って……もらうのも距離が、時間が掛かりすぎる。  ならばどうするか、答えは一つ。  ――流星群は眼前まで迫っていた。 「ぶっつけ本番だけど、やるしかない……!! 『反射シールド』『竜巻』」  まだこちらの世界に来てから一度も使ったことがない魔法、反射シールドを咲夜自身の眼前に展開した。トリスさん達は咲夜の後ろで頭を抱えて絶望している。  さらにD.Sとの戦闘で大いに活躍した竜巻を反射シールドで覆いきれていない箇所に展開させた。これで一応は安全になったがはたして反射シールドの効果がどれほど持つのかそれだけに賭けるしかない。 「――まずい!」  不意にどこからかそんな声がした。  トリスさん達、じゃない。ならえっちゃん……でもない。男性の声だった。ここにはいない声だ。  だが今度は女性の声も混じっていた。 「土壁(ストーンウォール)」 「氷壁(アイスウォール)」 「火壁(ファイアウォール)」  眼前まで迫っていたメテオがドラゴンに直撃した。おしくもドラゴンに命中しなかったメテオは咲夜達の方へ牙を向けた。
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