第十二話 龍疾ユングヴィ・ドラゴン

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 咲夜は思わず目を瞑った。  ――自身が貼った魔法に何も感触がなかった。不思議に思いゆっくり目を開けると三枚もの壁が貼られていた。 「……これ、は?」  咲夜は思わず力が抜け、反射シールドと竜巻を解除してしまった。薄透明のシールドは硝子が砕けたかのように散っていき、竜巻はゆっくりと回転がなくなりそよ風となって消えた。  咲夜の魔法が解けるのを合図として目の前にあった三枚の壁も崩れた。  まず咲夜の目の前にある土壁がまるで砂で作られていたかのように溶けていった。続いて氷壁も同じように溶けていき最後の火壁はろうそくの火が消えるようにパッと一瞬で消えた。 「……」  もう何がなんだか分からず咲夜はキョトンとしたまま地面へへたり込んだ。そのまま片手を持ち上げながら宙を仰いだ。  ドラゴンは、と確認する気力もなく全身の力を抜いた。 「――あのう……大丈夫ですか?」  しばらくすると誰かに声を掛けられた。その声にハッとし仰いでいた手を退けた。咲夜が発するよりも速く声を掛けてきた人が言葉を紡いだ。 「すみません。こちらの不注意で、危ない目に遭わせてしまって……」  髪は緑、眼は翡翠、長方形の縁がない眼鏡を掛けている。おまけに制服のボタンをすべて留めており、ネクタイまでも首元でしっかりと留めている。  これだけを見ればどこぞの優等生かと思うほどだ。 「……もう、美玲(みれい)のせいだぞ?」  咲夜が何も喋らなかったからかその人は後ろを振り返りながら誰かに話しかけた。 「あ、あれは、ただ……制御が……でもわ、私のせいですよね。ごめんなさい」  そう言いながら歩いてきたのはセーラー服の女の子だ。さっきの優等生風の人と違い髪は黒髪で肩ほどまで伸びている。しかも三つ編みのハーフアップだ。眼は……黒? だと思うけど少し黄色っぽい。咲夜から見てもかなりかわいい、と思える。  そしてもう一人、セーラー服の女の子の後ろに隠れるようにして立っている人が居た。この人はセーラー服の女の子と同じで髪は黒髪でそこまで後ろ髪は長くないが前髪がかなり長い。大方口に届きそうだ。眼は紅眼で燃えているというよりは冷めているといった印象だ。そして制服を完全に着崩しておりネクタイは着けずズボンからシャツは出ている。 「えっと……助けてくれてありがとう?」  とりあえずはさっきのメテオから護ってくれたことへお礼をした。三人ともなぜかバチが悪そうな顔をしていたが特に疑問には思わなかった。  咲夜はセーラー服の女の子の手を借りながら立ち上がった。それから顔やスカートについていた泥を軽くはたいて落とした。 「あなた達は……地球、いや、日本人?」  三人とも制服を着ており、もしかしてと思い咲夜は訊いてみた。
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