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真っ先に反応したのは意外にも制服を着崩している人だった。
「てことはお前も日本人? 俺らさ~気がついたらこんなとこいたのどうやったら帰れるか知んない?」
(予想通りの言葉遣いじゃん……)
咲夜は少し目を細めつつそんなことを思った。
「……残念だけど私も飛ばされて帰り方とか知らないんだよね~、あはは」
(白々しすぎたかな)
咲夜はこの人とはあまりかかわらない方が良いと思い断った。
「そっか~、それはざ~んねん……。じゃあさ、もう一人に訊いたら分かるかな~?」
そう言いながら咲夜の後ろ――馬車がある方へ指を向けた。咲夜は一瞬驚くもハッタリだろうと白を切った。
「あ~隠しても無駄無駄。どうせこれから町に戻ったりするんでしょ~?」
(こいつっ……)
どうやら影兎が馬車の中にいることは気がついているらしい。そして今からの行動にもある程度予想がついていそうだ。
「……はぁ。分かった降参。私の負けで良いよ」
そう言うと制服を着崩した人はニコッと口元を緩めじゃあ自己紹介からだなと言った。咲夜は一瞬キョトンとするがそのまま自己紹介が始まってしまった。
「俺は旋風蒼磨な」
両手で腰を押さえながらドヤッみたいなポーズで自己紹介をした。次にセーラー服の女の子が蒼磨の隣に立ち
「わ、私は神詠美玲とい、いいます」
両手を後ろで組みなぜか恥ずかしがりつつ少し歯切れが悪いながらも自己紹介を終えた。最後に制服をきっちり着こなしている人がビシッと指先まで伸ばし背筋を伸ばしたまま自己紹介をした。
「僕は風霧猟魔といいます。僕たち三人は幼馴染で中学一年生です」
「よろしく……って、年下?!! ……あ~、どおりで」
咲夜は一人納得し猟魔達を見た。何か聞きたそうな顔だったがそのまま自己紹介をすることにした。
「私は人影 咲夜。一応中三だからよろしくね、あと、え~と……」
咲夜は一瞬チラッと蒼磨を見た。それで何かを察したのか蒼磨はちょっとチャラけたような言い方で言った。
「……ん? ああ、蒼磨で良いって」
「――蒼磨はもう気づいてるのかもしれないけど馬車の中にいるのが如月 影兎。私の幼馴染だよ」
咲夜は横目で馬車を見ながら言った。その言葉に蒼磨以外の二人が驚いた。それから猟魔が苦笑いしながら蒼磨に向けて愚痴るように言った。
「……流石に、索敵に注ぎ込んだだけはありますね」
(注ぎ込んだ? スキル制MMOのステフリとかでよくある?)
一瞬そんな考えが咲夜の中で過るがすぐさま頭を振り考えを改めた。
(――そんなわけないでしょ、ここは異世界であってゲームの世界なんかじゃない。あんな甘ったるいモノじゃ……)
――と、その時蒼磨達の後ろで何かが動いた。
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