第十二話 龍疾ユングヴィ・ドラゴン

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 メテオが当たった衝撃で出た煙は既に晴れていたがいつの間にか()()()()()()()()煙が辺りを漂いだしていた。  真っ先に蒼磨が気付き後ろを振り返った。それに続いて美玲と猟魔も後ろを向いた。咲夜は視線を手前から奥へ向けた。  煙は少しずつ晴れ人型のシルエットが浮き上がってきた。煙が完全に晴れるとそこには頭から二本の小さな角が生えた()()女の子がいた。 「……んん……おにぃ、ちゃんは?」  目をこすりながら姿を現した裸の女の子はまるで今起こされたかのように辺りをキョロキョロしている。  警戒していた猟魔と蒼磨は全く予想外の事が起き混乱からの驚きに見舞われた。だがそれは一瞬でなくなった。 「――ちょ、まっ……あんたら何見てんのよ!」 「蒼磨、猟魔。目を閉じなさい!」  直後に咲夜と美玲に怒鳴られてそれどころではなくなったからだ。蒼磨はすぐに後ろを向いたが猟魔はすぐには向かなかった。 「おい、猟魔……何してんだ……ちょ、お前何鼻血出してんだ?!」  蒼磨が呼びかけても返事をせずなかなか後ろを向こうとしないので恐る恐る顔を覗き込んだ。すると猟魔の顔は真っ赤に染まり鼻血を垂らしているではないか。  蒼磨は猟魔の肩を掴みブンブンと前後に揺する。  鼻血が余計酷くなってしまった。 「……蒼磨~! はいティッシュ、詰めて詰めて」  すぐさま美玲がティッシュを取り出し蒼磨に駆け寄っていった。 「……って僕は子どもじゃない! 自分で出来るか、ら……」  ブシャー!  また鼻血が溢れ出てきた。蒼磨は笑い美玲は血を止めようと止血している。  ――不意に咲夜が笑いを零した。 「……ふふっ」  その笑みに鼻血を流している猟魔も止血しようとティッシュを持っている美玲も涙が出るほど笑っている蒼磨も困惑の表情を浮かべながら咲夜を見た。 「いやぁ、なんか君らってすごい仲良いんだね」  その言葉に蒼磨と美玲は照れたように頬をかき猟魔はさっきの倍ほどの鼻血が出てしまった。その反動で後ろへ倒れ――蒼磨が受け止めた。 「ねえ、さくちゃん……あの人達は?」  いつの間にか移動してきていたらしい影兎に突然耳元で囁かれ咲夜は一瞬ビクッとするがすぐに理解し蒼磨達のことを説明した。 「……つまり旋風さん達があのドラゴンを倒して、さくちゃんを助けてくれたってこと?」 「そういうこと」 「……なら礼をしないと……いけないよね……」  影兎はほとんど独り言のように呟いた。さすがの咲夜でも小さすぎて聞き取れなかった。  咲夜が蒼磨達を見るともうすでに猟魔の鼻血は止まったらしく談笑していた。そこへ影兎が―― 「ねえ。おにぃ、ちゃんは? おねえちゃんたちは……だれ?」  ((((忘れてた……))))  影兎がお礼を言いに行こうとした矢先、影兎は二本の角が生えた裸の少女に先を越された。
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