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「……え? 誰この子怖っ」
影兎は一言だけそう言うと咲夜の後ろに隠れるように逃げた。咲夜は裸の少女に向き合い背丈に合わせて屈んだ。
「えっと、名前はなんていうの? 迷子?」
「まい、ご? なまえは……たつや」
ゆっくりと口を開き裸の少女は名前を口にした。両手を胸の前で合わせ怖がっているように見えた。
いつの間にか隣に来ていた美玲が猟魔の制服を剥ぎ取り少女に掛けていた。ボタンは留めずただ掛けただけだったがあまりにも男達には見せてはいけなさそうだったため、動きにくいだろうが少女の腕を袖に通して前のボタンを留めた。
ただ、猟魔達の学校の制服は学ランではなくブレザーなのでどうしても胸元が開いてしまう。仕方ないがこれで我慢することにした。
「……スンスン。良い匂い」
――猟魔が気絶した。
「猟魔ぁぁぁ!! 大丈夫かぁぁ!!」
蒼磨が猟魔の肩を掴みブンブンと前後に揺すった。猟魔の顔が身体とは逆の方向に揺れる。
(僕はなにを見せられてるの?)
咲夜は呆れたように見つめ、美玲は慌てていた。かくいう影兎は状況がよく分からず首を傾げた。
「……そろそろ日が暮れそうだよ。帰ろう、さくちゃん?」
咲夜の耳元で囁かれた。咲夜も小声で「そうだね」と返すと後ろを振り返った。
見るとトリスさん達は眠っているようだった。HPもかなり回復してきているみたいなのでギルドに帰ったらサイルさんに報告しよう。そう咲夜は思った。
「私たちはそろそろ帰るけど、三人はどうする? ……あ、街まで乗っていく?」
「そうだな。なら――――なんだあれ?」
二人は猟魔に構うのを一旦辞め、蒼磨が返答をしようとしたが咲夜の後ろ、山岳の間の公道奥から何かがこちらに向かってきて居るのが見えた。
蒼磨は目線を咲夜の後ろに向け疑問の声を上げた。
「……『双眼鏡生成』『付与』『音波収集』」
影兎は興味本位から素早く双眼鏡を作ると遠くの音を聞けるように付与した。これで双眼鏡を覗くとそこで会話していることをそのまま聞くことが出来る。
「――だ。各部隊配置に付け! こちらに気付かれてない今のうちに包囲するのだ!」
しかし音を聞けるのは双眼鏡で覗いている影兎だけなので他の人には口頭で説明しなければならない。
向こうから迫ってきていたのはどうやら軍隊のようだった。
「……えっと、帰れないかも?」
影兎は双眼鏡から目を離すと振り向き様に思ったことをそのまま口にした。
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