第十三話 軍隊? と帝国

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 ――数時間馬車に揺られ東地区にある大きな街、ドラグナイト東帝国に到着した。  街に着くとテウォルドさんの仲間の冒険者達は挨拶だけして各自解散していった。個人で参加していた人が意外と多かったのか馬車を降りると誰とも話さずそそくさ帰って行くような人が見受けられた。 「……すごい、王都までとはいかないけど人が多い」  街には活気があり至るところで催し物や出店が開かれていた。たつやは疲れたのか咲夜の膝を枕にして寝ている。門を抜け馬車のまま街道を進んで行くと様々な建物が並んでいた。 「冒険者ギルド、商業ギルド、あれは……広場かな? 噴水デカ」  広場には子どもをはじめとしカップルが多数を占めている。それに噴水だけで五メートル以上あり目印としては一番分かりやすいポイントだろう。噴水の水はかなり澄んでおりキラキラと光っているように見えた。  冒険者ギルドは王都のと比べると外見はほとんど同じだが一回りほど小さく入り口までに十段ほどの階段があり入り口の扉が二重になっていた。  商業ギルドは大きさこそ冒険者ギルドと同じくらいだが商業ギルドの方は多少派手さがあった。冒険者ギルドは完全に木造で看板も階段も木で造られているのに対し、商業ギルドは柱は木造壁はコンクリのようなセメントのようなもので出来ていた。そしてこちらも冒険者ギルドと同じく入り口までに十段ほどの階段があり扉が二重になっていた。  影兎が不思議そうに眺め、思いついたかのようにテウォルドさんに訊いた。 「なんかこっちはアスタリア王国と違って不思議な感じですね」 「そうだな、ここいらは砂嵐が酷いんでな。アスタリア王国のほうがよっぽど暮らしやすいだろうな」 「なら、テウォルドさんはなぜここに?」  咲夜が訊いた。  テウォルドさんは一瞬考えるような素振りを見せながら腕を組むが意を決したのか口を開いた。 「……俺の場合は、まあしょうもない理由だが……兄貴に追いつきたいから、ここで修行を、な」  テウォルドさんは頭を搔きながらそう答えた。二人は一瞬ポカンとするが咲夜が前のめりになりながら大声で言った。 「全然しょうもなくないよ! 私も姉がいるんだけどね、一時期はすごく私が負けず嫌いで絶対に勝ちたいっって思っちゃって、いろんなところに行って、それでもダメでやっぱりすごいな~って……諦めちゃった」  まだ心残りがあるのか最後だけ言葉が弱くなった。 (さくちゃん……) 「……はは、そうか」  テウォルドさんは呆れたかのような笑いを零すと、今度は一際大きくガハハと笑った。 「そうかそうか、咲夜とは仲良くなれそうだな! っと見えてきだしたな、あれが宮廷だ」  街道の先に大きな建物が見えてきた。まさしく城と呼ぶに相応しい大きさと形だった。馬車は宮廷の前まで走ると咲夜達だけ降ろされた。
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