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第十四話 いたずらとお風呂
「……どうして宮廷に?」
咲夜が訊いた。
隣には影兎、蒼磨、理琉、猟魔が並んで立っている。たつやも連れて行くのかテウォルドさんが抱えるように持っている。
「あ~……行けば分かる?」
((((なぜ疑問形))))
「なぜ疑問形」
影兎以外の四人は同じ事を思い、影兎だけは口に出してツッコミを入れた。
テウォルドさんは困ったように笑みを浮かべていたが、いつの間にか宮廷の扉が開いており促されるように中へ入っていった。咲夜達もテウォルドさんの後を追った。
(この展開から察するに、王族の人間に会ったりするのかな? それとも王座の間みたいなところに行ったりするのかな!)
咲夜は異世界思考をしながらわくわくと歩いていた。
赤い絨毯がほぼ一直線に敷かれており、壁には魔石の入ったランタンが等間隔で並べられている。天井にはこれといって目を引くものは何もなく、白を基調とした単一の色合いになっていた。
十メートルほどの間隔で両開きの扉が左右交互にあり、一般人が見たところでどこに何室があるのか見分けがつきそうもなかった。
――と、テウォルドさんは左側の両開きの扉の前で足を止めた。
「この部屋にお前達に遭わせたい人がいるんだ」
そういうと左の取っ手だけを掴みゆっくりと開けた。
――中から埃が降ってきた。
「うわっ」「ひゃっ」「うぉっ」「わー、びっくり」
「……何してんだ」
咲夜はだけはわざとらしい棒読みな驚きを見せつつなぜかほとんど埃を被っていない、蒼磨だけは死角に居り埃を被らずに済んだ。そのほかの影兎、理琉、猟魔は頭から埃を被り全身灰色になっていた。
「あ……」
テウォルドさんは素っ頓狂な声を上げるとガハハと笑った。
「すまんすまん、間違えたわ! もう一つ先の部屋だ! ガハハ」
たつやが腕の中で寝ているのにも関わらず大声で笑うテウォルドさん。
猟魔は掛けていた眼鏡を外すと眼鏡拭きで視界だけは確保した。
理琉がこんな格好で人に会いたくないと言いだしたのでテウォルドさんが全員をお風呂に案内してくれた。蒼磨は入らないと行っていたが先程まで砂漠(荒野)にいたのだから汗くらいは掻いてるだろうから落としなさいと理琉に言われ渋々蒼磨も風呂に入ることになった。
「俺は説明しておくから、その埃を落としてこい! ガハハ」
((((いやテウォルドさんがつけたんでしょ))))
「いやあんたがわざとやったんだろ」
蒼磨以外は同じ事を思い、蒼磨はさっき感じたことをド直球に言った。
テウォルドさんは一瞬ぱちくりと瞬きをするが再びガハハと笑うと後ろ手を振りながら去って行った。
影兎は呆然と立ち、理琉と猟魔は全く気にしていない様子で自身の服についた埃を手で払っており、咲夜と蒼磨は胡散臭いと思いながらテウォルドさんの背中を見ていた。
「さ、咲夜さん、お風呂に入りましょ」
理琉のその一言をはじめとし各々脱衣所に入っていった。
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