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第十五話 お姫様と新たな勇者
風呂を出て少しすると執事? のような人が五人のもとに近づいてきた。
「初めまして、わたくし執事のモロノと申します。以後お見知りおきを」
執事のモロノさんは丁寧にあいさつをするとすぐ本題に移った。
「応接間まで、わたくしが案内いたします」
そういうとモロノさんは振り返りゆっくり歩き始めた。流れるような話の進み具合に影兎は一瞬酔いそうになるがなんとか持ちこたえた。
モロノさんに案内され応接間に着いた。
コンコンコン。
「姫殿下、モロノでございます。勇者様方ご一行をお連れいたしました」
「――入って良いわよ」
モロノさんはドアを開け、影兎達を室内へ招き入れた。全員が入ったところでドアを閉め、モロノさんは退出した。
「では失礼します」
姫殿下と呼ばれていた人は真ん中の椅子に座りこちらを見ていた。
金髪ロングに片側だけ三つ編みを編み込んでいる。三つ編みの根元には長めのリボンが付けられており、かわいらしさがあった。服装はドレス、物凄く派手というのではないものの目を引く美しさがあり流石は姫と呼ばれるだけはある。胸はまだ発達途中なのかリンゴよりトマトといった感じだった。
「どなたが私の召喚した勇者様ですか?」
なぜか姫殿下はこちらを睨むようにしながら問いかけてきた。
「……職業に勇者ってあったがそれのことか?」
蒼磨がそう言った。
咲夜の職業も勇者だがこの姫殿下には召喚されていないので、咲夜は何も言わずただ立っていた。
「そうですかあなたが……いえ、まずは謝罪を」
姫殿下がそう言いながら席を立つと深々と頭を下げた。影兎は内心ギョッとしながらその光景を見た。
「私のミスであのような場所に召喚してしまい申し訳ありません……」
なぜ睨むように問いかけてきたかは分からないが、すごく申し訳なさそうにしながら声を震わせ三人に謝罪した。
影兎は咲夜の背に立ち隠れた。咲夜はそれを見て何を思ったのか丁度姫殿下が顔を上げたところで声を掛けた。
「なら私らは必要ないよね? 別の部屋で待っとくよ」
一瞬、ほんの僅か一瞬だった姫殿下のハイライトが消えたのは。影兎はその変化を見逃さなかった。
「ええ、そうですね……モロノ。案内してください」
だがすぐさま何事もなかったように切り換えると外で待機していたモロノさんに声を掛けた。
影兎と咲夜はモロノさんに案内されベットのある部屋に連れられた。
扉を閉めると「スタスタスタ」とモロノさんが去って行く足音が聞こえた。
目の前には一人で寝る分には広すぎるほどのベットがあり、壁際にはクローゼットや机が置いてあった。
と、咲夜が突然ベットに飛び込んだ。衝撃によりベットは少し凹み咲夜を布団が包み込んだ。影兎はというとこの光景は見慣れていたのでとくになんとも思わず、咲夜が飛び込んだベットに腰掛けた。
「相変わらず好きだね、それ」
「私はベットを見ると飛び込まずにはいられないのだよ!」
布団からガバッと顔を上げそう言いながら親指を突き立てる。
「あ、そういえばえっちゃんは大丈夫?」
「? なにが?」
「魔力。デス・サーペントと戦ってかなり魔力消費したんじゃない?」
そう言われ影兎はステータスを見てみる。
「あ、ほんとだ。あと10しかない……そういえばなんか頭が少しクラクラするような」
「まあ私もそんなに残ってないけどね」
咲夜は少し苦笑しながら言った。二人ともデス・サーペントとドラゴンとの戦いでかなり魔力を消耗していた。
魔力とHpはほぼ比例している。魔力が枯渇すればHpが少しずつだが減っていく、もちろんHpが無くなれば死ぬ。Hpが全快していると少しずつ魔力も回復していく、ただし魔力が全快でもHpが回復することはない。
魔力の回復に一番効果的なのは睡眠をとることだ。寝ている内に空気中の魔力と体内の魔力を循環させ蓄積する。これは寝ている間に誰しもが無意識の内に行っているのだ。
「……ということで、私は寝るからえっちゃんも寝てね」
「え、あ、うん……おやすみ?」
「うん、おやすみ~」
そういうと咲夜はベットの左側に、影兎はベットの右側に入ると静かな寝息を立てながら寝た。
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