第十五話 お姫様と新たな勇者

3/3

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
         ◆ ◆ ◆ 「ふわぁ……んん……ここは」  かなり眠っていたのだろう、スッキリと目覚めることができた。欠伸を噛み殺しながら身体を起こし布団から上半身を出した。  一瞬ここがどこか考えたがすぐに思い出した。部屋の中が少し暗くなっている。完全に見えないことはないので視覚に問題はなかった。 「んん? ……」  ベットに両手を押しつけながら立ち上がろうと手を伸ばすと、なぜか……柔らかかった。いや、ベットが柔らかいのは当たり前だがこれは別の柔らかさだ。  目を開けて確認しようと思いもう一度欠伸をする。瞬きをしながら目を開け左手側を見ると可愛らしい寝息を立てている咲夜がいた。そして影兎の手は咲夜の二の腕の上にあった。  影兎は自分の運のなさにちょっとがっかりしながら手を置く位置を変え、完全に起き上がった。伸びをし、掛け布団を除けると床に足を着ける。淡い光が溢れている方へ足を向けるといつの間にか暗闇が辺りを包み込み夜の帳が下りていた。 「ふわぁ……」  影兎は窓を押して開け夜風に当たった。思いのほか冷たい風が吹いておりなんだか心地よかった。  ふと、左を見るとテラスのような場所があった。 (……人?)  そこに人影のようなものが見え影兎は一瞬考えた。が逃げられる前にと思い鑑定をしてみた。   職業  ?  ???   Lv5 状態 奴隷  Hp74/74 魔力72/80 素早さ17 筋力5 知力12  属性 風  スキル 聴覚拡張A 解析眼B 予知眼B 風の加護      索敵B 危険察知C  魔法 風刃D 応用魔法 【風見】 (……奴隷がなんでこんなとこに? …………なんかこのステータスどこかで見たことある気が、するような?)  影兎は人影の正体に驚きつつどうしようか迷った。主にこの二つでだ。一つ目はここで雇っている奴隷ならばスルーしても問題は無いだろうということ、二つ目はもしこの奴隷が他の、別の場所から誰かの手によって送られてきた『戦闘奴隷』だとしたらば少なからず放っておくと被害が及ぶかも知れない。だが『戦闘奴隷』の可能性は極めて低いと思われる。なぜなら職業欄に影兎と同じ「?」が表示されていたからだ。これがもしその人の魔法かスキルで見えなくなっているのならば「不明」と出るはずだ。でもどことなく既視感……というか、このステータスをどこがで見たことがある気がする。  影兎はここまで考えるとため息をついた。 (もう僕の知識()には負えないね)  そう思うと窓を閉じ、カーテンを閉めるとベットに戻った。咲夜を起こさないように掛け布団をそろりと上げると布団の中に入り横になった。  ――そして影兎は再び夢の中へと意識を同調させた。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加