第十六話 毒と地下

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 廊下に出て、適当に進んでいくと開けた場所に出た。  見たまんまを言えば広場、少しおしゃれに言えば手入れがよく行きとおっている庭。咲夜は吸い込まれるように足を踏み入れると、近くの花壇に腰を下ろした。 「きれい~。こんな花見たことない」  赤褐色に少し青が混じっており、花弁もどこで重なっているのか分からないくらいに繋ぎ目が薄く、まるで一枚の花びらのようだ。  茎を見ると小さな棘が突出しており、触るとチクッと痛みが奔った。咲夜は人差し指から流れた血を見て苦笑しながらこう言った。 「ねえ、えっちゃん……血が止まらないんだけど」 「…………え?」  影兎は一瞬理解が追いつかず呆然とした。  影兎も咲夜の指を見たがいくら拭き取っても次に次に血が溢れてくる。特に指を押さえていたりもしていないし、別段痛みがあることもない。ただただ血が止まらずずっと垂れてくる。 「『水球(ウォーターボール)』」  咲夜が片手で『水球』を創ると人差し指を包み込むように被せた。血が水に吸い込まれていき次第に『水球』は紅く染まってしまった。中の様子が全く見えないので指を抜くと、まるで何事もなかったかのように血が出始めていた。 「……ねえ、えっちゃん。これってさ……呪いとか毒じゃない? もしかしたら」 「呪い?」 「そう。例えばこの植物には触れた者の自然治癒能力を阻害する呪いが掛かってるとか、もしくはそれに類する毒を持っているか」 「でもそれだとしたら、なんでこんな場所に?」 「わからない。けど、あの姫殿下が私とえっちゃんをよく思っていない可能性もある」  咲夜は指を冷水で冷やしながら考察した。 「それよりも、今はこの場所から離れるほうがいいかも知れない」  咲夜はそう思い立つと影兎と共に走り出した。庭を抜け廊下に戻ると自室へ向かい必要なものだけまとめるとテラスへ出た。 (ここは……)  テラスに出ると影兎は頭痛を起こし顔を顰めたがすぐ立ち直った。  影兎はここからどうやって出るのか悩んでいると咲夜が何やらカバンの中を弄っていた。  と、いきなり誰かが扉を勢いよく開いた。 「お前たち! ここで何をしている!」 「やば、えっちゃんこれ掴んで!」  おそらくこの城の警備をしている人だ。腰に刺さっていた剣を抜刀し影兎たちに刃先を向けた。影兎は咲夜に渡されたもの――直径三センチはあるロープを掴むと咲夜と外へ向いて走り出した。  咲夜はテラスの柵に足を乗っけると、柵を壊す勢いで足に力を入れ――蹴った。影兎も咲夜の後を続き柵に足を掛けると空へ飛んだ。 「『疾風風紀』!! 行くよ? えっちゃん! 『反射シールド』」  二人は『疾風風紀』を使い空中での滞空時間を延ばした。もう一つ、咲夜は『反射シールド』を空中に、二人の落下地点へ()()()展開した。二人の足が『反射シールド』に着くと同時、落下の勢いがそのまま斜め方向に流され爆速的な飛躍となった。
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