第十六話 毒と地下

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「うわぁぁぁ!?」  咲夜の左手と影兎の右手にはロープが握られている。影兎はあまりの速さに絶叫しながら咲夜の後をなんとか着いていった。 「戻ってこい! お前たちどこへ行くー!」  テラスで先ほどの警備兵が叫んでいる。咲夜は構わず速度を上げ城外へ脱出した。影兎は咲夜に引っ張られる形で城壁を越えた。タイミングを合わせながら『反射シールド』を展開させていき無事地面に着地した。  咲夜は影兎に掴ませていたロープを回収すると壁沿いに歩き始めた。影兎は咲夜の後を追いかける。 「ねえ、どこに行こうとしてるの?」 「んん~……とりあえず()()()()()」  咲夜は意味深にそう言うと歩くスピードを速めた。  影兎は色々と咲夜に訊きたいことがあったが、それどころでは無さそうなので口にはせず黙々と咲夜の後を着いていった。  ――ある一角で突然咲夜の歩みが止まった。影兎はどうしたのか訊こうとしたが咲夜の方が早かった。 「……逃亡の定番と言えば、地下水路でしょ」  振り向き様に咲夜はキメ顔でそう言った。咲夜の前方には地下水路へと続く階段があり、奥に連れ灯りが薄れていた。影兎は思わず身震いを起こすが深呼吸をして意を決した。  影兎は咲夜に連れられて地下水路へと降りていった。 「……どうしてここに地下水路の道があるって知ってたの?」 「ふっふっふ、えっちゃん。ただ私がなにもせずこの街に入って城まで来たと思う? ……こういうのはね、先に見つけておくと後が楽なんだよ」 「……あ~、馬車に乗ってるときにキョロキョロしてたもんね」  影兎は合点がいったようになるほどと頷いた。  ――少しの静寂。  雫が垂れている音がする。ポツポツと水滴が水溜まりに落ちては波紋を広がらせて一体化していく。どこからか雨漏りしているようだ。とはいっても雨は降っていないので地中に溜まった水分が垂れてきているだけだろうが。  しばらく降りると階段がなくなった。目を凝らすと、辛うじて通路らしき石段と水が流れているように見える。 「『光明(ライト)』」  咲夜が辺りを照らした。あまり明るすぎると何かに見つかってもいけないので必要最低限の明るさに調整し、周囲へ浮かばせた。  とりあえず行く当てがないので真っ直ぐ歩き始めた。 「う~ん……索敵使えたら楽なんだけどね、あとは空間把握とか」  聞き慣れない単語が飛び出てきたので、影兎はなかば復唱するように聞き返した。 「くうかんはあく? て何?」 「文字通り、空間を把握する魔法……かな。蒼磨が使ってた“索敵”は私の予想だけど、多分魔力の反応を探るものだと思う。どこに何があるかは探せないけど、どこに人がいるかは探れるんだと思うよ」 「そんな魔法があるんだね」  影兎は素直に称賛した。が、咲夜の一言で影兎は唖然としてしまった。
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