第十八話 憶測と推測

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「――ちょうどいいタイミングですわね。少し休憩といたしましょうか」  そう言いながら手をパチンと合わせ、ヴァルネスは微笑んだ。  猟魔と美玲は何をして疲れたのかソファーの背もたれに背中を押しつけていた。  モロノさんがワゴンを押しテーブルの前まで来ると、カタカタと食器を鳴らせながらテーブルにお菓子を並べていく。美玲は思わず「おいしそう……」と言葉が漏れた。モロノさんがお菓子を並べ終わると後ろを振り返ることなく意地悪そうに言った。 「そんなところに隠れてらっしゃらなくても、こちらに来ませんか?」  蒼磨は半空きになった扉を自分が通れる幅まで開けると中に入ってきた。 「……隠れてたわけじゃないがな」 「おや、そうでしたか。ではそういうことにしておきましょうかな」  扉から入ってきた意外な人物に猟魔と美玲は目を丸くした。ヴァルネスは一瞬だけ目を細めたあと、とってつけたかのような驚きの顔を作った。  蒼磨はヴァルネスには一瞥もくれずに猟魔の隣に座った。右足を上げ左膝の上に乗せると()()()()()。  美玲と猟魔の間に緊張が奔った。蒼磨が目を瞑っていたのはたったの数秒、いや瞬きするために一瞬閉じただけかも知れない。しかしその一瞬が美玲と猟魔には()()()()()()()。  蒼磨が瞼を開けると美玲と猟魔はまるで先程までの空気が消滅したかのように緊張の糸が切れ、その場にへたり込んだ。  かくいうヴァルネスはとてつもない危機感とプレッシャーに押しつぶされ過呼吸になっていた。真っ先に気づいたモロノさんが傍に付き容態を確認している。 「姫殿下、姫殿下! お気をしっかり!」  モロノさんはヴァルネスの肩を揺らしながら声を掛けるも一向に良くなりそうになかった。すると猟魔が頭を押さえながら立ち上がるとヴァルネスに近づいた。 「モロノさん、ヴァルネスさんから少し離れていただけますか」  モロノさんは一瞬戸惑うが猟魔の言うとおりヴァルネスから離れる。それを見送った猟魔は片手をヴァルネスの頭上に掲げた。そして 「光の精霊よ、万物を浄化する聖なる癒しよ。今我が手に集いて彼の者を治さん! 状態異常回復(エクストラヒール)」  猟魔の口から紡がれた詠唱がヴァルネスの頭上に白い魔法陣を出現させた。一瞬淡く発光すると詠唱の終わりと共に強く光った。  光はヴァルネスの身体を優しく包み、まるで光がヴァルネスを抱擁しているかのような暖かな光になると、ヴァルネスの顔色が少しずつ良くなってきた。  完全に顔色が良くなるとヴァルネスは瞬きをする。ゆっくりと重たい瞼を開くとハッとしたように飛び起きた。直後頭を押さえながら前のめりになる。それを慌てて猟魔が()()()()()
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