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「大丈夫ですか?」
「え、ええ……」
「……たったアレだけでこのざまか」
美玲と猟魔はすかさず声を上げた。
「謝「ってください!!」りなさい!!」
一瞬蒼磨はビクリとするが眉間にしわを寄せながら猟魔を睨んだ。猟魔は反撃するかのように口を開く。
「僕たちでさえ蒼磨のソレに耐えられないんですから、まともに食らって立っていられる方が不思議ですよ」
「……ちっ」
蒼磨はため息と共に舌打ちをすると背もたれに背中をどさりと預けた。
ヴァルネスはモロノさんの手を借り立ち上がった。ゆっくりとした足取りで扉の方へ向かっていくと、蒼磨から声が掛かった。
「おまえが何をしようとしてるかは知らねぇが、自室だからって油断してんじゃねぇぞ?」
ヴァルネスは皆には見えないように唇を噛み締めると「ええ……以後気を付けますわ」とだけ言い退出していった。
「……どういうことですか?」
扉が閉まると同時に美玲が口を開いた。蒼磨は呆れたようにため息を零すと美玲と猟魔に向き直った。
「この屋敷の中歩いて何も気が付かなかったか?」
蒼磨は質問に質問で返す。美玲は一瞬嫌な顔をするが、答えを探るべく脳内を巡る。
「……特には」
「廊下に一旦出て、少ししたら入ってきてみろ」
美玲は言われた通り廊下に出て、数秒の時間を置くと再びこの部屋に入った。蒼磨は普通に戻ってきた美玲を怪訝そうに見ながらため息をついた。
「……マップ見ただろ、やり直せ」
「無茶言わないでください、戻れなくなります……」
「そういうことだ」
「え?」
美玲は蒼磨の言ったことが理解できずしばらく逡巡したが、やはり分からなかった。
「廊下にある物の配置、どこをどう見ても全部同じだ。唯一違うのは曲がり角くらいなものだな」
「ですが、それだけならば攻められたときに時間稼ぎが出来るという理由が付けられませんか?」
「良い点に気が付いたな。だが惜しい、それもあるだろうが本命は多分別だ」
そこまで言うと蒼磨は窓の辺りまで移動した。押して開けると外の様子を窺った。
(誰も見てねぇな……よし)
蒼磨は外に誰も居ないことを確認すると魔法を発動させる。
「……剣作製。おらっ」
そう言うと外に向かって投げた。
「なにしているんですか蒼磨! 外に誰か居たら――え?!」
美玲は投げ出された剣を見て驚いた。それもそのはず、剣が宙に浮いていたのだ。放り投げられ地面に落ちていくはずが地面に接触するよりも先に空中に刺さっている。完全に宙に浮いているのだ。
猟魔は美玲の異変に気が付いたのか窓辺までやって来るとその光景を視界に収めた。
「……ってただの透明な壁があるだけではないですか」
そう猟魔は呆れたように言った。
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