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「たっ、多分蒼磨も本心であんなことを言っているのではないと思います。なので、あ、あの……ほ、ほんとうにすいません」
美玲の言葉で我に返ったのかヴァルネスは頭を振り先程のせいで火照りに火照った頭を冷やした。
「……いえ、すべては私のせいよ。みんなの制止を振り切って、召喚魔法を使って座標指定もせず、あんな場所に飛ばしたのだから、ああなってもしかたないわ。あんたらも勇者様と同じように、私を罵倒してもいいのよ……私が全部、悪いんだもの」
途中から立っていられなくなったのか地面にへたり込み、目のハイライトを消しながら後ろめたいことばかりをだらだらと続けて言った。
美玲はこういうときになんと声を掛けたら良いのかすぐには思いつかず言葉が詰まった。美玲が視線を彷徨わせていると隣にいたはずの猟魔の姿がないことに気が付いた。ハッとして目の前、ヴァルネスを見るとそこに猟魔の姿があった。
片膝を付きヴァルネスと同じ目線になるとゆっくりと話し始めた。
「……少なくとも、僕は怒ってなんかいませんよ。むしろあそこに飛ばされて良かったなと思っています。人助けができましたしね」
最後のは小声で付け足した。
「それに、感謝してますよ」
「……かん、しゃ?」
ヴァルネスは意味が分からないとばかりに不安そうな顔をした。
「そんな顔をしないでください……せっかくの綺麗な顔が台無しですよ?」
最後の言葉は少し小さかったため美玲には聞こえなかった。だが言葉は聞こえなくとも表情の変化は少し離れているくらいでも読み取れる。怒りとは違う火照り、少し上気しているようにも見えた。
「で、でも……」
「でもじゃないです。僕の目を見て言ってください。僕はあなたに会えたことが何よりも嬉しいです、僕たちをこの世界に連れてきてくださってありがとうございます」
「わ、私は……本当に怒ってないの?」
「何度言えば分かるんですか、怒ってないですし怒る要素が僕にはありません」
そこまで言うとヴァルネスは猟魔に抱きついた。文字通り、そのままの意味で。腕を猟魔の背中に回し両膝を突き立てるような形で抱きついた。
猟魔は努めて優しい声を意識しながらヴァルネスの背中に腕を回した。
「あの人は憶測と推測を誤ったまま行動しているんです。物事の本質を見抜こうとしないで、自分がそうだと思ったら信じて疑わない。それに、真実を知ることを必要以上に推測している。推測で行動し、憶測で物事を判断する。あの人はそう言う人なんです」
一度長めに呼吸を入れると続けて言葉を紡いだ。
「蒼磨にもし何かされるようであれば僕がなんとかします。いつでも、僕を頼ってください」
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