第七話 ゴブリン邸とお祝い 前編

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第七話 ゴブリン邸とお祝い 前編

「私たちゴブリンは、三百を超える大所帯となっていますが、以前は少なかったので山の麓の小さな洞穴に住んでいました。」 ゴブリンの話によると、あの日もいつも通り、食べ物の調達のため洞穴を出て森の中をさまよっていたそうだ。するとたまたま人族の村を見つけ、何か食べ物が無いか離れた場所から見ていたんだ。だが人の気配は無く静まりかえっていた。その時の時刻は昼くらいだったそうだ。これはおかしいと思った偵察中のゴブリンが恐る恐る村に入っていった。そこには人っ子1人居ず、家の壁には苔や草花が絡みついていた。更には窓ガラスも割られドアも破損しており、とても人の住める場所では無かった。これを見たゴブリンは、急いで仲間の居る洞穴へ帰りこのことを(ハイ・ゴブリン)に伝えた。すると(ハイ・ゴブリン)はこう答えた、「ならばいっそ俺達の住む場所にしよう!」と、それを聞いたゴブリンは急いで他の仲間に指示を出し、あの廃墟への移住を始めた。そして今に至る。 なるほど.......ゴブリンが見つけたときには既に時遅しか 「そんな廃墟をよくこんな綺麗にできたな!」 条夜はゴブリンの意外な凄さに感動と感激を覚えた。だがここで一つ疑問が残る。村にいたはずの人族は何処に姿を消してしまったのか、 「考えても仕方ない.......か」 このことは覚えておいた方が良いな。いつか役に立つときが来るかもしれんしな 「そうですね。.......今日は泊まれて行かれますか?」 ゴブリンは、外が豪雨のためここに泊まっていくか、提案してくれた。 「おお、助かる」 .......なにか、忘れてるような....... 『(うん、忘れてるね。仕佐を、条夜.......探しに来てやれよ?)』  【次の日】 俺は世話になったゴブリンの家を出て村に向かおうとしていた。 「今日は世話になったな、また来るよ」 「はい、いつでも来てください。歓迎しますよ」 俺はゴブリン達に見送られ、俺達が最初に行った村への道を教えて貰い、ゴブリンの町を後にした。道中、仕佐が木の上で寝ていたのでびっくりした。 「あれ、ゴブリンは討伐できたの?」 「あー.......」 一応出来たと言うことにしておいた方が良いのかな 「うん、討伐完了した!」 「よかったー、『特殊』で見てたけど、よかった。倒せたんだね」 「お、おう」 .......どうしよう 「あ!」 突然条夜が何かを思い出したようにして、叫んだ。 「うわぁ!、どうしたの?」 「そういえば、あの婆さんに『夕方までには帰る』て、言わなかったっけ?」 「.......」 だよなー、てか急いで戻らんとやばないか? 「ねえ、早く村に行った方が良くない?」 条夜が言うより先に仕佐に言われた。 「ああ、急ごう!」 俺らは急いで村へとダッシュして帰った。 ん?俺は方向音痴だから、仕佐に案内して貰ったよ.......          ◆ ◆ ◆ 村に戻ると沢山の兵士が並んでいた。 「なんだ?」 「お、おぉ!戻ってきおった!」 婆さんがそう言った。すると 「戻ってきたぞー!、お前ら無事なんだな?」 どうやら、行方不明になった僕らを探すために、捜索隊が編成されていたみたいだ。 「すみません!ご迷惑を.......」 僕は急いで謝った。が 「お前らが無事だったんだ。謝らなくて良いよ」 そう言いながら中年冒険者が仕佐達の背中を、バンバン叩いた。 「イテテ」 「ハッハッハ」 「さあ!行方不明だった2人は無事帰還。祝杯と行こうじゃないか!」 と、捜索隊のリーダーがそう言った。 「お゛ー!」 その場に居た捜索隊の20人と村の人数十名が、楽しそうに拳を上げた。 そして仕佐達は村の、言わば酒場のような場所に皆で肩を組んで行った。 「.......では、2人の無事を祝して、乾杯!」 「乾杯!!」 皆が一斉にグラスを上げて、他の人のグラスと合わせ合った。 「ふぃー。おばさん、おかわり!」 「はいよ。しっかし、よく無事だったもんだねぇ」 「いずれはすごい冒険者になるぞ、あいつらは」 バーの方で何か、言ってるような気がする.......  祝杯は昼過ぎまであった。仕佐と条夜は、皆から酒を薦められていたが「飲めない」と言うことで押し切った。なぜ、「未成年」を使わなかったかというと、この世界の常識では15歳で成人、つまり大人なので飲んでも構わないからだ。ちなみに、冒険者ギルドの登録最低年齢も15歳だ。なので未成年とは冒険者に登録が出来ないため、年齢を偽っていると思われかねない。  先程まであんなにも賑やかだった、酒場が静まりかえっている。なぜなら、ほとんどの大人が、まだ昼間なにも関わらず、酒を飲み、料理を食べ、をしていたからだ。床で寝ている人や、椅子に座ったまま手を組んで寝ている人など、酒の空瓶を持ったまま倒れている奴もいる。 「ふわぁ」 僕はあまりにも眠くてつい、あくびをしてしまった。まだ昼間だというのに。 「おーい、条夜ー?」 僕はふらふらしながら条夜を探した。 「ぁあ、なんだ?仕佐、俺は眠い.......」 どうやら条夜も眠たそうにしているっぽい。 「僕らは、一旦ギルドに帰って達成を承諾してもらいに行くよ」 「えぇ、眠い.......」 「だから、宿で寝るよ!帰って!」 「りょーかい.......ちょっと待ってて」 やっと、動く気になったか.......やば、僕も眠い....... そして条夜は初歩魔法の1つ、水球を作って顔を洗った。 「かぁ!目ー覚めた!行くぞ!仕佐」 キンキンに冷やした水を顔にかけ、無理やり目を覚まさせた。 「て、寝てるし.......仕方ない」フフッ 条夜は悪の顔をしながら、さっき自分にかけた水よりもっと冷たくした冷水を、仕佐めがけてぶちまけた。 「せーのっ、おりゃ!」 バシャー! 仕佐の顔に大量の冷水がぶちまけられた。その瞬間 「うわぁぁ!!冷たっ、寒っ!!」 仕佐は、唖然としながら条夜の方をゆっくりと見た。 「.......何がしたいの?、僕死ぬよ?と言うか寒いんだけど」 「よし!冒険者ギルドに戻るよ!」 条夜は何事も無かったかのように、仕佐を無視した。 「お゛い!」          ◆ ◆ ◆ 『(仕佐達がゴブリン討伐をしている間、咲夜達は一日の間に冒険者ランクCまで昇級していた。なぜ、たった一日でそこまでランクが上がったのか、それを今から見ていこうと思う。仕佐達は未だにFなのに.......)』 「おおー!ここが夢までにも見た、冒険者ギルド!ね」 咲夜はかなり嬉しそうにしながら、入り口前なのにはしゃいでいる。影兎はというと 「う、うんかなり、大きいね.......」 影兎は冒険者ギルドの大きさ(・・・)に驚いていた。まあ、無理も無いだろ、最初は仕佐も驚いていたしな。
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