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私からあなたへ、あなたから私へ
うちの愛犬、ヨークシャテリアのなっちゃんは、
注文が多い。
自分の犬用ベッドで寝てたかと思うと、起きあがって人の顔をマジマジと見にくる。これがなっちゃんの注文の仕方。なっちゃんの黒目は丸々としていて大きくて、吸い込まれそう。いや、吸い込まれたい。と思わされる可愛さなのだ。
そしてこの可愛い誰もを魅了するお目めにうちの家族は全員メロメロになりながら喜んで注文を受ける。
「ご飯ちょうだいよ。」
「頭を撫でてよ。」
「遊ぼうよ。」
「向こうの部屋行きたいからここの扉を開けてよ。」
「新しいおもちゃ頂戴よ。」
大体はこの5つのどれかに当てはまる。
私の家族はみんな、なっちゃんの雰囲気で、
注文を当てることができる。私たちが犬語を喋れるわけでもないし、なっちゃんが日本語を話すわけでもないが、数年一緒に住むと意思疎通ができるようになる。これが犬と暮らす面白さであり不思議なところだ。
コロナの影響で在宅勤務をしていた初夏のある日、私のお昼休憩中になっちゃんが「外に出たい」と言いに来た。
なっちゃんは普段はあまり外には出たがらない。散歩も道に下ろしただけで「抱っこ」と飛びかかってせがむので散歩は嫌いなのだなぁと思っていたから、私は「珍しいなぁ。」と思いながらも、「天気も良いから日向ぼっこしたいのだろう。」と思って、家の敷地内の庭に出してやることにした。
なっちゃんは勢いよく庭に飛び出して行って、日差しが当たるところに寝そべって石ころをしばらくの間、噛んでいた。
私もなっちゃんの横に腰を下ろし、心地いい風と日向を感じながらなっちゃんを撫でることにした。
そしてその日以降、私が在宅勤務のたびに、なっちゃんは、私のお昼休憩中に外に行きたいと得意のキラキラ光線で注文してくるので、私は「はいはい、仰せの通りに。」と外に連れて行ってあげた。
ある日、いつもと同じように外に出て、なっちゃんとほっこりしていた時、空を見上げていてふと気付いた。
「あれ、もしかして、なっちゃんが私を外に連れてってくれてる?」
その時期の私は、慣れない在宅勤務で少し疲れが溜まっていた。画質が良くない家庭用のノートPCで作業することからの疲れ、日中誰とも話さず1人家でもくもくと作業をする孤独感、そして仕事が終わる頃には夜なので、下手すると1歩も外に出ない日があった。
「PC画面ばかり見て疲れるでしょ。外は風も気持ちいいよ。日向ぼっこしたら、リラックスできて温まるよ。」
私はこの日、
そんな優しい気持ちをちゃんと感じることができるくらいリラックスできてる自分に気づいた。
犬語が分からなくても、日本語が分からなくてもお互いに「私からあなたへ。」ができるんだね。
という見解は、ただの親バカな妄想なのかな?
私の愛犬なっちゃんへ。愛を込めて。
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