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「店長さん、あんたの心配はただの杞憂だよ。だってその子、男に遊ばれる対象にすらならねぇもん。つまんねーから」
森岡さんに対して特別な感情なんて持ち合わせてない。
だけど。それでも。彼が放った最後の一言が、尖ったナイフになって私の胸に深く刺さった。
『つまんねー』
昔、別れるときに元カレの遥斗に言われたその言葉が、今でもずっと私の恋愛の枷になってる。
「一緒にいても俺が話題を見つけて振るばっかりで、気の利いた会話もできないし。美人だから経験値も多いかなーって期待したけど、ガード堅くて全然ヤらしてくれそうにないし。見かけ倒しで、想像以上につまんなかった」
表情を失い青くなっているであろう私に、森岡さんが次々と言葉の刃を突き刺してくる。
「ゆっくり近づいたけど、時間かけて損した。もう連絡したりしないから、安心して」
「お前……」
私のそばで低く唸ったホタルの声が、小さく震えている。
怒ってくれているんだ。
それがわかったけど、森岡さんに突きつけられた言葉たちへのダメージが大きくて。喜ぶ余裕は少しもなかった。
ただ、心が身体が、冷たくなっていく。
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