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「じゃぁ、そろそろ行っていいかな。彼女、待たせてるから」
「お前……」
にこやかに笑って去っていこうとする森岡さんを、ホタルが追いかけようとする。
だけど私は、ホタルの袖をつかんで引き止めた。
「ありがとう、私は大丈夫。森岡さんが言ったこと、間違ってない」
「は?」
振り返ったホタルが怒りの感情を露わにして私を見下ろす。
でも、ホタルがどうしてそんなに怒るのかが私にはわからなかった。
だって、森岡さんが言ったことは全部事実だから。
気の利いた会話もできないし、基本的に警戒してばかりで可愛い態度だって取れない。
男の人が軽い気持ちで遊びたいって思ってたとしても、簡単にそれに応えられない。
そんな私は、遥斗に振られたときの私とちっとも変わってない。
今もずっとあのときのまま。
「怒る理由なんてないんだよ。だって私、本当につまらないんだもん」
ホタルを見上げて、無理やり口角を引き上げて空笑いする。
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