At the BAR

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人生で初めて付き合った彼氏に、別れ際に「つまらない」と言われて。それから、新しく恋をするのが怖かった。 またつまらない女だって思われるんじゃないか。そう思ったら、誘われた飲み会に行くのも新しい知り合いができるのも不安で憂鬱だった。 だけど、森岡さんから──……いや、もう何年も前に遥斗から突きつけられた言葉を、ホタルが否定してくれた。 ホタルは……ホタルだけでも、私のことを「つまらないやつじゃない」って思ってくれてる。 その事実があれば、十分だ。 「ありがとう」 思いきって、勇気を出して、ぎゅっとホタルを抱きしめ返す。 これ以上ないくらいに心を込めて感謝の言葉を伝えたら、ホタルが私の頭に手のひらをのせて、優しく髪を撫でてくれた。 ホタルの温かい大きな手のひらが、私の気持ちを穏やかにする。 ホタルの腰に腕を回したまま顔をあげたら、彼が私の髪に触れながらふっと優しく目を細めた。
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