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人を睨んでいるような普段の顔付きと違う、穏やかな優しい表情に、胸がきゅんと締め付けられる。
ホタルの表情に見惚れていたら、私の髪を撫でていたホタルの手がいつの間にか右の頬に添えられていた。
頬に感じる熱に気を取られたのも束の間、今度は唇に熱を感じる。
少し遅れてホタルの唇が触れていることに気付いた私は、慌てて目を閉じた。
不意打ちのキスに緊張して、ホタルの腰に回していた腕も身体も強張って固まる。
そんな私に、ホタルは2回、3回と離れそうになってはまた触れる、優しいキスを繰り返した。
何度目か唇が合わさってようやく緊張がほぐれた頃、ホタルの唇が名残惜しそうに離れていく。
「そろそろ戻らないとな」
そう言って、ホタルが私を離す。
ホタルの身体が離れた瞬間、無性に淋しいと思った。無言で見上げると、彼が笑って私の頭を撫でる。
「行こう」
抱きしめて何度もキスをしたあと、ホタルが私に言ってくれた言葉はそれだけだった。
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