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僕も藤本も、高校を卒業すると東京に出て来た。僕は有名調理学校に、藤本は一流音楽大学に。ピアニストを目指していた彼は、何があったか途中で進路を変更してキーボーディストになった。それは正解だったようで、今や海外に呼ばれるメタルバンドの一員だ。
「いやいいよ。ついでにあと2組入れたから」
いつもなら一日に入れるのは、ランチ、ディナーで各5組。今日だけ、藤本から頼まれたついでに入れ替えで追加の3組を入れた。
「それだけ? 小松は商売っけないよね」
「好きなように料理が出来て、食って行ければそれでいいからね」
「ミシュランに載ったらどうするんだよ」
「載らないよ、こんな小さな店」
見たところ、藤本は一人だ。予約は二人で受けている。
「藤本、連れは?」
「もうすぐ来るかな」
藤本は手元に伏せてあったスマホを返して、時間を確認する。予約時間10分前だ。
「ここで待ち合わせ?」
「うん。今日は仕事なんだって」
去年も似たようなこと言ってたな。その時は金髪で長髪の、ファー付きの赤いロングコートを着た男の子を連れていた。見るからにバンドマン。派手だな、って印象が残ってる。
「クリスマスイブまで仕事って、ねぇ?」
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