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そう言って微笑む藤本は、何だか楽しそうだ。顔を見るのは去年のクリスマスイブ以来だけど、随分雰囲気が違う。
藤本はオープン以来時折足を運んでくれてはいたけれど、クリスマスにうちを使ってくれたのは去年が初めてだ。
でも、デートって感じじゃなかったな。仕事柄、デートで食事に来てくれるカップルはいろいろ見てる。藤本は頭数合わせで見繕った後輩と食べに来た、って雰囲気だった。連れの男の子はフレンチなんて慣れていないのか、ガチガチに緊張していたし。
その時より藤本の表情は柔らかいし、相手がクリスマスイブに仕事をしていることが少し不満なような、それでいて嬉しいような声だ。これは、特別な相手に違いない。
「お相手は忙しい人なんだ?」
「最近急にね。まあ、今年はコロナだったから、俺も向こうもずっと暇だったんだけど」
「藤本の仕事は?」
「今年はライブ、全部キャンセル。アメリカのフェスとか入ってたんだけど、無理だよね」
「ああ、それは難しいね」
俺も留学していたフランスのコンテストに出場する予定だったけど、行けなかった。今年ばかりは仕方がない。
「来年は来てくれって言われてるけど、どうなるかなぁ」
「日本の活動は?」
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