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ボタンのなくなった下腹に手を当てる。さっき悠斗の手が少しだけ触れた、あの子のいたお腹。もう泣かないって決めたのに、下を向いたら涙がぼろぼろこぼれ落ちて、足元の土が水玉模様になった。
大丈夫。今日は卒業式だから。みんな泣いてるから。今日だけは、泣いてもいいよね。
明日からまた、がんばるよ。また会うときには、今度こそ、ちゃんとお母さんになれるように。胸を張って、あの子を迎えられるように。
涙を拭いて見上げた空は昨日までより高く、青く。まだ冷たい風にはこれからひらく花の優しさが、少しだけ香っているような気がした。
【了】
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