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「悠斗、待って!」
来週でもう妊娠4ヶ月になる。それなのにいつまでも話をしてくれない悠斗を放課後の校門で見つけて、私は走って追いかけた。足音に気づいた悠斗はさすがに逃げたりしなかったけど、「しまった」って顔をして、少し先にある公園に私を誘った。
「ちゃんと話してくれないんなら、私今から悠斗の家に行ってお母さんに話すから!」
自分の親にさえ言えないのに、会ったこともない悠斗のお母さんになんか話せるわけない。それでもその脅しは、やっと悠斗をこっちに向かせた。
「ちょ、落ち着けよ」
「私だって落ちついて話したいよ! だけど悠斗が、全然会ってくれないから……っ」
「分かったからちょっと、声!」
悠斗は道路を歩く人ばかり気にしてる。だったら家で話そうよ、そう言っても無駄だってことを、私はもう学んでいた。
悠斗は私の家に来なくなった。妊娠する前は、週に2回は来て愛し合ったのに。自分の家より落ち着くって言ってくれたのに。まるで、家に入ったらもう逃げられないと思っているみたいだ。
「俺だって真剣に考えてるよ。けど、中間試験も近いし……他にもやること、いろいろあんじゃん」
「中間……?」
その言い訳が、冷たい風みたいに胸を通り抜けた。内申点に直接影響する重要な試験だって、そんなの分かってるけど。
(それって、私と赤ちゃんより大事なこと……?)
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