まいりましたっ!

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日織(ひおり)さん、これ……」 「すごいですよね!? でも、別にスパークリングではないのですっ。――ね!? 驚きましたよね!?」  確かに。  日織さんがグラスを傾けた途端、瞳を見開かれた意味が、僕にも分かった。 「僕も金雀(きんすずめ)は初めて飲んだので知りませんでした。これ、なんだか微発泡、ですよね」  その微かな刺激が、芳醇な吟醸香と相まってキリリとした酸味を感じさせる。でも実際の味はというと、甘みを感じさせつつも、あと口はスッキリと飲みやすい辛口と言った感じ。  日織さんが作ってくださったつまみをあてに、ちびちびと口に含んでいたら、グラスに小さな気泡が沢山ついた。 「修太郎(しゅうたろう)さん、グラスに小さな泡が沢山ついてすっごく綺麗なのですっ」  日織さんが嬉しそうにグラスを光にかざしていらっしゃるのを見て、おや?と思う。 「飲まれないんですか?」  お聞きしたら「これ、甘口で飲みやすいので、油断したらグイーッて一気飲みしちゃいそうで」とか……。ちょっと待って日織さんっ。 「獺祭(だっさい)も割と甘くて飲みやすいんですけど……金雀のこのシュワシュワは反則なのですっ」
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