いいみたいなのですっ!と言われても

2/5
370人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
日織(ひおり)さん、週末は何をして過ごしたいですか?」  夜、仕事後にいつものように掛けている電話で週末のデートの希望を聞いたら、電話先で少し考える気配がした。 『修太郎(しゅうたろう)さんっ、私、酒蔵(さかぐら)に行ってみたいのですっ』  予期せぬ言葉が返ってきた。 「サカグラ……って。あの、お酒を造るところですか?」  思わず聞き返したら『それ以外に酒蔵なんてあるんですか?』とスマホの向こうでクスクスと笑う声がした。 『ほら、前に私の幼なじみのききちゃんがこちらへ遊びにいらしたとき、お土産に買って帰られたじゃないですか、こちらの蔵元のお酒』 「獺祭(だっさい)のことですか?」  聞けば、『はいっ、それですっ』と弾んだ声が返る。 『私、あのお酒、すごく気にいったのですっ。すっごく美味しいのですっ』  ん? それは初耳なんですが。  と言うか、いつの間にお飲みに?  僕の知る限り、日織さんは日本酒なんて(たしな)まれたことはないはずだ。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!