Endless Die

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 ある森に一人の男が住んでいた。彼は昔、ある動物研究チームにいた。しかし、あまりにも残虐な事を繰り返し、チーム内で孤立していた。この研究チームは動物の命を大切にしていきたいと考えていたので、対立してしまったのだ。頭の良さでは男が群を抜いて良いが、チームの和を乱し、チームのコンセプトを守らないので、研究所を追い出され、森の中にひっそりと暮らしていた。  追放された後も、一人で研究を続けていた。話し相手はおろか、他人の声を聴く事もないので、滅多に口を開かなくなった。開くときと言えば、何処かにぶつけたり、実験が成功した時に反射的に出る時くらいだ。他人などどうでも良いと思いながらも、人とは本来、群れで行動する生き物だ。会話が恋しくもなる。それに人間は、自身の事を話すと快感を得られる。しかし、誰もいない空間に向かって話すというのはただ虚しいだけだ。そこで男は、言葉に反応し、相槌をうってくれるモノを作ることにした。  男はまず、モノの器を何にするべきかを考えた。今まで研究してきた事を活かすのであれば動物になる。しかし、動物に「言葉」だけを反応させるのは至難の業だ。そこで男は、研究対象ではなかった機械を使うことにした。専攻は違えど、基礎的なことは学んだ。だが、今まで研究してきたこととは全く違う。何度も失敗をした。男はそれが許せなかた。天才である自分が失敗などしないと信じてやまなかった。しかし、現状は成功していない。怒りは募る一方だった。それでも作る事を止めなかったのは、ここで諦めたらできないと認めることになるからだろう。何度目の失敗か分からない時にようやく成功した。ただ相槌が欲しかっただけなので見た目には拘っておらず、球体に口のようなものがついているだけだ。子供が見たら泣き出してしまうような見た目をしている。  男はまず、自慢話をしだした。自分の秀才ぶりや研究対象ではないロボットまでも作り出したことなど。まるで失敗をしてないかのように語った。今まで自慢話をしても、ここまで肯定された事がなかったので気持ちが良かった。一通り自慢が終わったので、ロボットを放置した。  最初こそは毎日のようにロボットに話しかけ、自慢や愚痴を言っていた。しかし、次第に回数は減り、今では全く話しかけていない。むしろ、小さな独り言にも反応するので苛立っていた。苛立ってはいるが、ロボットを使わなくなったのは苛立ちからではない。虚しさを感じたからだ。何を言っても「はい」しか言わず、自慢をしているが、自慢をしている気分にならなくなっていた。そして、ロボットを作った事すら後悔するようになった。快楽を得ようとしていただけなのに虚しさを感じ、腹立たしく思っていた。
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