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満月がよく見える深夜。大和王国全土に悲鳴が響いていた。その悲鳴は老若男女問わず響いており、国民全員が国の外に逃げ出そうとしていた。しかし、誰一人国から逃げ出すことはできなかった。
「どうして国から出られないんだ! おい! そっちからはどうだ!?」
「こっちもダメ! 何か膜なようなものがあって出られないわ! なんで出られないのよ!」
王都八雲だけではなく、大和王国の全ての都市や町に村の住民が外に出られなかった。また、国中を守護している王国騎士団員も外に出れなかった。騎士団員は国民の暴動や不安を収めようとするも、話を聞かれることはなかった。
国土全ての都市や町で国民が悲鳴を上げている最中、王都八雲にある王宮にて一人の騎士が階段を駆け上がっていた。その騎士とは騎士団に入団し一年目の黒羽出雲である。出雲は綺麗な耳までかかる長さの黒髪を振り乱しながら階段を駆け上がり、右手には支給品の長剣を強く握っていた。また、青と白が映える騎士団の制服には赤い血のような血液が付着していた。
出雲は目鼻立ちがハッキリしている顔立ちをしているが、どこか幼い雰囲気が残っている。その出雲の右頬にも赤い血液が付着しているようであった。出雲は頬に付着している血液を気にも留めずに階段を上り続ける。
「どこですか! どこにいるんですか王女様!」
出雲は焦りながら王宮の階段を上り続けていると目の前に黒い霧が一ヵ所に集まりそこから魔物が現れた。その魔物は狼や人型の死霊系の魔物が数体現れていた。
「また邪魔をする! 俺は早く王女様を助けないといけないんだ!」
出雲は長剣を強く握り、目の前に現れた魔物を両断していく。出雲は消えろと叫びながら最上階に到着した。最上階の廊下には数名の倒れている騎士と魔物と相打ちになっている騎士がいた。
「騎士団のみんなが……ここで戦闘が行われていたんだ……」
出雲は倒れている騎士団の仲間を見ながら、奥にある部屋を目指す。最上階の東側にある角部屋が出雲が救おうとしている王女がいる場所である。
王女とはこの大和王国の第二王女であり、出雲を幼い頃に救ってくれた人物である。出雲は幼い頃から第二王女と関わりがあり、騎士団に入ってからは話す機会が増えていた。
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