境界 - 第1話 転校生 

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 学校に着いても特に挨拶をする友達はいない。みんな樹希へのいじめが始まると、関り合いになるのが怖くて離れていった。  敢えて引き留めようとは思わない。  その方が樹希にとっても楽だったから。  正義感を燃やしていじめに反発した者が、ドラマや映画のように自分のせいで泣くことの方が苦痛だった。  無言で教室に入る。自分の席に近づくにつれて、異臭がした。  机の上に糞が置いてあった。  まったく呆れるほど幼稚な手口だ。  目の端で自分の様子をニヤニヤしながら見ている、及川杏里紗(おいかわありさ)とその取り巻きの姿を確認する。  まったく早起きして後生大事にこんなものを持ってきて、自分の机に置く。  その執念には頭が下がる。  きっと自分が半狂乱になって叫びながら、慌てて糞の始末をする姿を想像して頑張ったのだろう。  樹希は椅子を引いて、その上に何のしかけもないことを確認すると、無造作にどかっと座った。  とてもじゃないが、杏里紗たちの期待に応える気には成れなかった。  少々臭うが、このままにしておくことにした。教師の反応はだいたい予想できるが……  糞を放置している樹希の姿に、教室内が少々どよめいてきた。糞の臭気に周りの子も辛そうだ。だが、関わり合いに成ることが怖いため、誰も何も言って来ない。
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