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学校に着いても特に挨拶をする友達はいない。みんな樹希へのいじめが始まると、関り合いになるのが怖くて離れていった。
敢えて引き留めようとは思わない。
その方が樹希にとっても楽だったから。
正義感を燃やしていじめに反発した者が、ドラマや映画のように自分のせいで泣くことの方が苦痛だった。
無言で教室に入る。自分の席に近づくにつれて、異臭がした。
机の上に糞が置いてあった。
まったく呆れるほど幼稚な手口だ。
目の端で自分の様子をニヤニヤしながら見ている、及川杏里紗とその取り巻きの姿を確認する。
まったく早起きして後生大事にこんなものを持ってきて、自分の机に置く。
その執念には頭が下がる。
きっと自分が半狂乱になって叫びながら、慌てて糞の始末をする姿を想像して頑張ったのだろう。
樹希は椅子を引いて、その上に何のしかけもないことを確認すると、無造作にどかっと座った。
とてもじゃないが、杏里紗たちの期待に応える気には成れなかった。
少々臭うが、このままにしておくことにした。教師の反応はだいたい予想できるが……
糞を放置している樹希の姿に、教室内が少々どよめいてきた。糞の臭気に周りの子も辛そうだ。だが、関わり合いに成ることが怖いため、誰も何も言って来ない。
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