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流星君とは違う温かい手が、私の輪郭を縁取る様にして撫でる。
何度も何度も、まるでお人形を愛でるかの如く撫でられる。私は生きているのに、ちゃんと息をしているのに、意味深な相手の触れ方に身体が硬直して思考も遮断される。
「水都。」
「……。」
「俺の大切な水都。」
「……。」
「俺だけの可愛い水都。」
「……。」
「俺の愛してる水都。」
これまで幾度となく囁かれてきた言葉達すら、全く違うニュアンスを含んで鼓膜を揺するのは気のせいだろうか。否、きっと気のせいなんかじゃない。頬に掛かっていた髪を厭に丁寧に払い除けて、露わになった頬をしっかりと掌でなぞる兄が目を細める。
唇には弧を描いているものの、やはり歪だ。そして不気味だ。
「水都に触れて良いのは俺だけだ。」
「お兄ちゃん何言って…「そうだろう?」」
私の唇に掌で強引に蓋をして首を傾げる兄の瞳孔が開いている。
「だから俺はただ、俺の愛しい水都の身体を穢した野郎が誰なのかを訊きたいだけだ。」
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