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初めて感じる温度だった。流星君の印が浮いている箇所の痛覚が悲鳴を上げたのも束の間、やがて唾液を纏った舌が鎖骨を這う。唯一痛みを訴える術であるはずの口許は相手の手で覆われたままだ。「痛い」と放つ事すら許されない。
何が起きているの?何が起きているの?何が起きているの?何が起きているの?何が起きているの?何が起きているの?何が起きているの?何が起きているの?
彼のキスマークが付いていたはずの場所から、愛おしい余韻が消えている。その代わりと云わんばかりに、火傷してしまいそうな程の熱さが肌を焼いている。
「水都が悪いんだ。」
「……。」
「あれだけ隠して隠して隠して隠して、良い兄貴の皮を被って傍にいたのに。わざわざ下らない女を恋人に仕立ててカモフラージュまでしていたのに。」
「……。」
「水都が俺以外の男に身体を捧げるから悪いんだ。」
「……。」
「そうだろう?」
「……。」
「俺の愛情を悪戯に弄ぶから悪いんだ。」
「……。」
「全部全部、水都が悪いんだ。」
怖かった。放物線を描いたままの唇も、私の身体を雁字搦めにする圧倒的な力も、見開かれた目も、全てが怖かった。身体が震えて心が震えて、涙で視界が滲んでいく。
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