摂取8.0g

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綺麗だ。綺麗だ。と繰り返しながら私の肌に唇で触れていく兄に、ただ泣くしかできない無力で脆弱な自分。ギシッと軋むベッドの音が鼓膜を痛く貫く。 「水都。水都。水都。水都。水都。水都。水都。水都。俺の愛しい水都。」 触らないで、流星君の温もりを忘れちゃいそうだからもうこれ以上触らないで。流星君の余韻が消えちゃうからもうこれ以上囁かないで。流星君に刻まれた甘い記憶が上書きされちゃうからもうこれ以上何もしないで。 私がどれだけ望んでも流星君から貰えなかった「愛してる」。流星君がどれだけ望んでも兄から貰えなかった「愛してる」。たった一言だけれど、その言葉が持つ意味は余りにも深くて余りにも大きい。 恐怖と緊張で呼吸が乱れ肩で息をする私を、兄は偉く大切そうに扱う。その優しさが更に私の瞳を涙で滲ませた。 お腹の括れに繊細な手つきで触れる癖に、それとは裏腹に乱暴にキスマークを次々と刷り込んでいく兄。どれだけ身体を捩っても抵抗しても、全然響いてくれない。 「あいつにどんな風に触られた?」 「……。」 「あいつは俺の水都をどうやって愛していた?」 「……。」
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