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口を閉ざして涙を静かに流す私を見ても、兄はただ嗤うだけだった。
「そんなに流星が大切か？」
「……。」
「そんなに流星に絆されたか？」
「……。」
どうしてこんなに歪んでしまったのだろう。ここまで狂ってしまったのだろう。私達三人は幼馴染で、仲良しで、家族だったはずなのに。いつからこんなに乱れてしまったのだろう。
実の兄に犯されそうになっている状況下に立たされていると云うのに、この期に及んで私の頭を埋め尽くしているのは艶笑を湛える愛しい彼の貌。とんだ阿呆な女だと野次を飛ばされるかもしれないけれど、流星君の気持ちを考えると兄からの「愛している」を注がれる事への罪悪感が心にのしかかっていた。
流星君の想いが成就するのは難しいとは分かっていたものの、兄がこんなにも彼を雑に扱うとは思わなかった。兄はもっと彼を大切に想っていると信じていたのに絶望する。
まるで流星君が邪魔者の様に言わないでよ。流星君はお兄ちゃんの事を愛してるんだよ？容易に打ち明けられない感情を抱えてずっとお兄ちゃんの傍にいるんだよ？それなのに「殺す」だなんて簡単に言わないで。もっと流星君と向き合ってよ。
「お兄ちゃん…酷いよ…。」
人の事を心配している場合じゃないのは重々承知しているけれど、流星君を愛してしまっている手前どうしても彼を庇護したい気持ちが込み上げてしまう。
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