87.わたしも、パイロット

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「しかも心優が気絶したから、キャプテンからすぐに中止命令がでてローアングルキューバンは頂点到達時点で中止。降下時の横回転せずに降りてきたところだよ」 「えー、そんな……」 「それでも、パイロットでもないのに、あのループの頂点で気を失っていないのはたいしたもんだよ」 「とっても綺麗だった。コックピットが宇宙みたいだった」  雅臣が優しく笑う声がヘルメットに聞こえてくる。 「同じものを見たんだな。俺と心優。俺が大好きなあの世界を、まさか、一緒に見てくれる女がいたなんて。こんな最高なことが他にあるか」  彼が囁いた。  愛している、心優。最高の空をありがとうな。  心優も微笑む。  わたしの大佐殿。  空を飛ぶお猿さん。  そんなあなたを、傷つけたことがあったけれど。  お許しください、大佐殿。  やっぱりあなたしか、愛せなかった。  傷つけても愛したかったの。  だから、どうしても知りたかった。あなたが手放せないほどに愛した空を。  いまは、あなたと一緒に空の上。  あなた達が見た藍の天蓋も、珊瑚礁の天蓋も。  わたしはもう知っているよ。あなたの空を!   ■ お許しください、大佐殿  完 ■ 【続】お許しください、大佐殿2 へ続く✈・・・
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