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いつもはスラックスなのに――。噛みしめる。自分の一番いいところを見せるチャンスをなくしている。
「いえ。私は構いません」
そうだ。たとえスカートを着用していても、護衛でいざというその時は、どのような恰好をしていても体を動かさねばならないだろう。
「だ、そうだ。塚田」
「仕方ありませんね」
ため息をつきながら、塚田少佐が立ち上がる。背丈は、日本男子標準といったところ。城戸中佐よりはもっとほっそりしている。なのに彼は少佐の肩章が付いているジャケットを脱いで、その気になっている。
その身体を見て、心優もやっと理解する。彼も武道を嗜んでいる身体。中佐殿のオーラに圧されて、中佐より細い彼の身体が霞んでいただけ。
そして中佐はなんだかワクワクしている子供のように目を輝かせ楽しそう。
「塚田は、君のお父さんの教え子だよ」
え……。心優は驚き、眼鏡の彼を見た。
「もっと若い頃の話です。それに園田教官の教え子はごまんといます。その中のひとりに過ぎません」
「ご謙遜を」
と中佐がクスクスと笑っている。
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