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「そうだ。せっかくだから、臨場感を出そう。俺、園田さんに護衛してもらう上官をする。塚田が暴漢な」
「暴漢って、嫌な言い方ですね」
まるで、今日の遊びを思い付いたように中佐殿はウキウキとして席を立ち、あっという間に心優の傍に来た。
「守ってよ、園田さん」
にっこりにこにこの笑顔で、上から顔を覗き込まれ、さすがに心優はドキリとしてしまう。
キリッとした眉に、大きな黒い目。陽気な男の子がそのまま大きくなったような――。おおらかそうな男性。
秘書官も、元パイロットも、もっと怖い目でキリキリしているのかと思っていた。
制服ジャケットを着たまま、心優は中佐殿の一番補佐であろう男との組み手を望まれる。
眼鏡の少佐もジャケットは脱いだものの黒ネクタイは緩めず。そのままの姿で、心優の目の前へと立った。
「はい。園田さん。ちょっと気が散っているな。集中して」
中佐が心優の肩を柔らかに掴む。
指が長い大きな手。戦闘機の操縦桿を握っていた手だと思うと、妙にドキドキするから不思議だった。
どんなパイロットだったのかな。
ふと彼を見上げてしまう。ちょっと訝しそうに首を傾げる彼と目が合ってしまった。
――隙だらけ、ですね。
はっと我に返る。その時はもう始められていた!
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