2.ご立腹ですか、中佐殿

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2.ご立腹ですか、中佐殿

 国防の最前線を見つめていた眼差しに、心優は吸い込まれそうになっていた。  でも、背後にいるこの大きな人をわたしが護らなくてはならない……。  この人を、これから?  後ろにいる中佐殿をつい見入っていることは、背後をがら空きにしていることになる。  そんなぼうっと中佐殿に見とれている隙をつかれ、『暴漢の手』が心優の肩を掴んだ。  反射的とはこういうことをいう。直ぐに正面に向き直り、頭を下げ構えを取り、目線は敵の顔、目!  上目に睨むとその男と目が合う。男の冷めた目が少し驚きの色を含んでいたように思えたが、いまの心優にとって頭に浮かび飛び出した指令は、足を上げること!  ――っく!  心優の肩を掴もうとした男の手がサッと引っ込み消える。  あちらも上手。この場合、たいがいの相手の腕は大きく弾き飛ばされ、身体の重心を失いよろめいているはず。だが、塚田少佐はそうならずサッと素早く後退。深入りはしない。しかもそこでもう戦闘態勢の構えを整えていた。  暴漢役を仰せつかった男の目が変わる。そして心優も中佐殿を背に構え威嚇する。  頭の上で『すげえ』と中佐殿の軽い感嘆が落ちてきた。
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