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「うわ、怖いよ。園田さん。あの男の目、すごく怖くなっちゃったよ」
なんて、中佐殿はこの場を楽しんでいる。が、心優はそんな余裕はない。たぶん、少佐殿も。いや、あちらは『本気』になられた模様。密かに心優の背筋が凍る。
父の教え子というなら、相当厳しい組み手をやってきたはず。
なんだ、本気になるとすごい護衛がいるじゃない。さすが将軍様の秘書室。そして心優の中で熱いものが沸き上がる感覚。久しぶりの……。
そして動けない。あちらも心優の目を見たまま、動こうとしない。
眼を見れば解る。父と組み手を何度もしてきた男だと。これだけの補佐がいれば、自分なんて。眼鏡の少佐も、きっとおなじことを思っているだろう。あの教官の娘……。その女が中佐殿の傍に来るとしたら、なんて考えてくれているのだろうか。
それを見極めなければいけない。そして、見極められる! 向こうから頭を低くし、心優の懐に割り込もうと決してきた。
だけど、残念。心優には見える。『どこを取れば、この男が仰向けにひっくりかえるか』が。お得意の空手ではない、これは兄に教えてもらった柔道の手。
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